リーマンショック時を上回る財政出動が金を押し上げる
11月の大統領選に向け、景気悪化を防ぎたいトランプの思惑も、金の上昇の追い風になっている 写真/AFP=時事
「3月、FRBが0.5%の利下げを決定し、その後さらに無制限のマネー供給を発表した時点で、金は上がるしかなくなった。上昇の最大の理由は、過剰流動性です。FRBを筆頭に、すでにゼロ金利やマイナス金利になっている国は金融政策が効かず、世界の中央銀行がこぞって過去にない大規模な財政出動に踏み切っている。その規模はリーマンショック時と比べものにならず、空前と言っていい。マネーがかつてないほど希薄化しているので、実物資産の代表格である金が値を上げるのは当然なのです」(池水氏)
一般に、金価格は
実質金利とも逆相関の関係といわれているのだ。
5月中旬にNYダウはかなり回復したが、すべての金融商品のなかで最初に値を戻したのは金だった。その後、しばらくは1700ドル付近で揉み合っていたが、すでにこの水準を抜け出し、最高値更新を視野に入れている。
「ひと昔前は、中国やインドの実需が金を動かす大きな要素のひとつだったが、今や投資マネーが価格決定の主要因となっている。特に、主な受け皿となっている金ETFは、このところ毎日のように残高の最高記録を更新しています。NY金や史上最高値を更新した東京金だけでなく、中国やインド、タイなど多くの国でも最高値を更新するなど、非常に高い水準で推移している」(池水氏)
激増する金ETF残高
昨年あたりから増大していた金ETFの残高が、ここへきてさらに急増している。主なプレイヤーはやはり、欧米のヘッジファンドだ。
「実体経済の悪化スピードのあまりの速さに、FRBは市場への資金供給を拡大し、国債を無制限に買い入れることを決め、さらに投資不適格級のジャンク債(ハイリスクの社債)まで買い入れるという……。そして、過剰なマネーは、欧米のヘッジファンドによって金ETFへ大量に流入している。金価格の上昇で減少した中印の実需をカバーした格好です。リーマンショックのときにも似たようなことが起きたが、今回が違うのはヘッジファンドだけでなく、欧米の個人が金を買っていることです。経済活動は停止し、イタリアやスペインで多くの人が亡くなり、株は暴落……資産防衛のために、これまでにないほどの規模で個人が金を買っている」(亀井氏)