2000年前後に栄華を誇ったFlashの終焉。同時に失われるコンテンツに思いを馳せる

Flash黄金時代~Flash文化が花開いた2000年前後

 「Flash黄金時代」と呼ばれる時期がある。Flash 文化が花開いた2000年前後を指して使われる言葉だ。始まりは1998~2002年頃で、終わりは2005~2007年頃になる(参照:ニコニコ大百科)。現在の30代以上で、ネットをよく見ていた層には、Flash アニメーションは、一つの文化として記憶に残っているだろう。  こうした時期の Flash 動画の中には、強く記憶に残っているものもいくつかある。『恋のマイアヒ』『ペリー来航』『ゴレノゴ』。また、FROGMAN による『秘密結社鷹の爪』は、短編連作アニメとして楽しませてもらった。当時は、Flash 職人の人たちが紅白に分かれて新作を出す、紅白フラッシュ合戦もおこなわれて盛り上がっていた(参照:ニコニコ大百科)。  この時期は、まだ通信回線が貧弱だったこともあり、ネットで大きな動画データを視聴するのが一般的ではなかった。2000年前後の頃、ベクター形式の画像を動画として動かせる Flash は、ファイルサイズが小さく、拡大しても滑らかに見えることから、多くのクリエイターたちが動画を作る道具となっていた。  また Flash は、企業のWebサイトの構築や、Webゲームの開発にも利用された。Flash の勢いは非常に強く、携帯電話向けの Flash Lite も存在しており、2003年にNTTドコモで初採用され、多くの携帯電話で利用されていた。

デジタル文化は、消滅が早く、保存が難しい

 2020年の年末で、Flash Player の公式配布が終わり、Flash コンテンツは事実上閲覧不可能になる。ある時代に世の中を席巻したコンテンツが、根こそぎ閲覧したり利用したりできなくなるわけだ。  こうした出来事は、デジタル時代以降、非常に増えている。Javaアプレットが世を席巻していた時期もあるが、現在 Javaアプレットを利用している人はほぼいない。Internet Explorer でしか動かないWebサービスが、IEのサポートが終わりハシゴを外されることもある。  デジタルデータは、人間が理解できない情報の羅列だ。これらの情報を読み取り、人間にとって意味がある形に再生するソフトウェアやハードウェアが別途必要になる。そのため、これらが失われると、データだけあっても再生できなくなってしまう。死んだ状態になってしまう。  死んだデータを、文字どおり”再生”するソフトウェアやハードウェアを含めてデータを保全することはなかなか難しい。特にソフトウェアは、ハードウェアの上にOSが載っていて、その上にソフトウェアが載っているといった、多段式になっていることが多い。Flash に関して言えば、2000年前後のマシンの上に、2000年前後のOSが載っており、その上に2000年前後のWebブラウザが載っており、その上に Flash Player が載っている。その時代のまま保存するのは、なかなか困難だ。  昔の家庭用ゲーム機などでは、こうした古い環境を動かせるエミュレータを作っている人たちもいる。しかし権利の問題などもあり、全てを当時のまま気軽に利用できるわけではない。たとえばファミコンやスーパーファミコンでは、公式で多くのゲームが遊べるようになっているが、当時のゲームが全て遊べるわけではない(参照:任天堂)。また、操作性なども微妙に違う。  アナログ時代も、文化の保全は完璧ではなかった。デジタル時代は、さらに大変になるのかもしれない。将来の研究者のためということもあるが、一人の人間が生きて死ぬまでの間ぐらい、コンテンツへのアクセスが維持されればよいのにと思うことが多い。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。
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