世界最大のダムとは、もちろん中国「
三峡ダム」のことだ。今年の雨の時期、中国ではすでにいくつかのダムが決壊、もしくは「放流」が行われている。そのせいで、すでに宜昌などの地域の水害被災者は数千万人に上った。避難指示が出されている人々の数は1600万人に上る。これだけでもすごい数だが、
万が一ダムが決壊したなら下流域の3億~6億人に被害が及ぶという。
日本の総人口の、最大5倍の人々が被災するのだ。しかもこのダムは大河「長江(日本ではなぜか支流の一つの「揚子江」と呼んでいる)」の中流にあり、下流には武漢や南京、上海などの大都市があり、中国経済の中枢がある。
長江下流、上海の様子
しかもダムに流れ込む水域には人口3000万人の重慶があり、工業排水や生活排水などの汚染水を川に流し込んでいる。したがって、
決壊して流れ出る洪水はきれいなものではなく、ヘドロや有害物質を含んだ汚水なのだ。それが1000kmも離れている下流の上海まで流れる。
この三峡ダムは最上流にあるわけではなく、中流域に位置する。
これが決壊すれば下流域の3億~6億人に被害を出し、そのままにしておくとダムの上流に被害を及ぼす。どちらにしても最悪の結果をもたらすものだ。だから下流の人たちはダムから放流するのに反対し、上流の人たちは早く流すことを望んでいる。
「10年と持たないだろう」しかも三峡ダムは無理に早く作られたので、設計・施工とも欠陥建設である可能性が高い。その証拠に、このダムを建設したがっていた人たちは、竣工式には顔を出していない。建設時にすでに数千か所のひび割れが起きていたからだ。顔を出すことでその後の責任を追及されたら困ると考えたのだろう。
中国の水文学・河川工学者で清華大学水利系教授だった故・黄万里(こう・ばんり)氏は、三峡ダム建設時からと述べていた。
ダムは1993年に着工、2009年に完成したのだから10年は持った。しかしそれから先はどうなるのだろうか。どうも早急に造ったせいで、コンクリートに溜まる熱を十分に冷やすことができていなくて、ひび割れたのではないだろうか。
このダムはものすごい大きさで、ダム堤から水の溜り始める位置まで約500kmある。東京から500kmと言えば京都の手前まで、もしくは東北新幹線なら東京から新花巻駅付近までになる。そこまでがダムのバックウォーターの範囲になるのだ。
貯水容量は222億トン(日本最大容量の奥只見ダムの37倍)もある。
土砂に埋まってしまった長野県の美和ダム
そして考えてもらいたいのが、ダムのために溜まる土砂はどこに溜まるかということだ。たいてい土砂は流れが止まったところに溜まるから、ダム堤の反対側500km先に堆積する。その堆積した土砂を取り除くのも大変だ。しかし、たいていの世界中のダムはそんなことは考えてもいない。
日本では毎年、いつの間にか地図からダムのマークが消されていく。それは壊されもせずに堆積した土砂とわずかな水たまりとなって、ただの滝になった場所としてダムは忘れられていくのだ。
土砂で埋まってしまった北海道の二風谷ダム
しかし三峡ダムの場合はバックウォーターの距離が遠すぎて、人知れずダムよりはるか上流に土砂が堆積していく。これがダムの上流地域に洪水を起こしている理由だ。
川が合流する地点では土砂が堆積して、上流からの水を流さずに洪水を起こすのだ。