金与正同党中央委員会組織指導部第1副部長(写真/時事通信社)
平昌冬季オリンピックを機に急速に和解へと傾いた朝鮮半島情勢。大阪サミット後に米・トランプ大統領と金正恩委員長との電撃対話が実現した時には、60余年に及ぶ朝鮮戦争の完全終結と平和体制の構築が現実味を増したが、2018年の南北首脳会談から2年、韓国と北朝鮮の関係は一気に冷却期間へと突入した。
日本のメディアでは、北朝鮮の「微笑み外交」の象徴でもあった、金正恩委員長の側近で実妹の
金与正朝鮮労働党第一副部長の豹変がセンセーショナルに報じられているが、この北朝鮮の豹変の理由について正確に報じているものは極端に少ない。ほとんどのメディアは脱北者が北朝鮮に飛ばした政権批判のビラが理由かのように報道している。
しかしそれは違う。この数週間の北朝鮮の怒りの根源は何なのか。北朝鮮がいう韓国の「落ち度」とはなんだったのか。2018年4月と9月の南北首脳会談と南北合意、その履行状況から現在の南北関係について検証する。
アメリカによる、南北コミュニケーションの徹底的な破壊
今回の南北関係の破綻は、脱北者団体が北朝鮮に飛ばしたビラが、引き金になったことは否定しないが、メディアが連日報じているような内容では無いはずだ。より本質的な部分において、北朝鮮の怒りは、2018年4月の南北首脳会談以降、
「何もしてこなかった」韓国側の過去の2年間のすべてに向けられている。そしてその背後にあるアメリカに向けられている。
一気に南北融和へと突き進んだかに見えた南北関係の裏側には、
アメリカによる、南北コミュニケーションの徹底的な破壊が行われていたからだ。
韓国の民間団体が発表した資料には、今回の南北関係の破綻の主因としての「
韓米ワーキンググループ」が具体的に解説されている。この韓米ワーキンググループは、韓国・文在寅大統領と北朝鮮・金正恩委員長の2回目の会談(2018年9月19日)直後の同年11月に発足している。