さて、そんなカルチャーショックを感じた筆者だが、同じように驚かされたのが、
今回の選挙における日本での報道だ。そこでは単に選挙結果を報じるだけでなく、与党「法と正義」を紹介する際に、「
愛国」なる文言が踊っていたのだ。(参照:
日本経済新聞、
毎日新聞、
共同通信)
そのほかにも「
強権的」「
国民主義的」などの形容詞が並ぶ報道が見られたが、単に選挙結果を報道する内容の記事で、
いったい何をもって「愛国」という言葉を使っているのか、大きな疑問が浮かんだ。
前述のとおり、2番目に票を集めたのは野党「市民プラットフォーム」の候補者だが、こちらは「愛国的」ではないのだろうか? そもそも、
いったい何をもって与党は「愛国」的だと表現しているのか。謎は深まるばかり。
例えばドイツのAfD(ドイツのための選択肢)が躍進したとき、極右と書いたメディアはあったが「愛国保守」と表現したメディアは見当たらなかった。フランスの国民連合(国民戦線)はどうだろうか? オーストリア自由党で検索しても「愛国保守政党」なる表現を用いた記事は見当たらなかった。
無論、「法と正義」はEUからも前述したように度々注意されている極右ポピュリズム的な政党であるから、「極右政党」ならば理解できる。
選挙結果、それも他国の選挙を報道するにあたって、日本のメディアが特定の政党を
「愛国」という極めて曖昧かつ、読者を誘導するような表現を使っていることは、海外にいながらも、いやいるからこそ
非常にショッキングで、強い違和感を覚えた。
今回の大統領選においては、得票率が格段に上がり決選投票までもつれたこと、前述のとおり若年層が極右候補を支持していたことが注目を集めた。決選投票までは約1か月あるが、
リベラル票がチャスコフスキ氏に集まり、逆転勝利となるのか? それとも
若年層が保守的な現職にそのままスライドするのか?
コロナウイルスの影響も大きい。そもそも
今回の大統領選は5月に行われるはずだったが、延期された経緯がある。ネット投票や郵便投票などの案も浮上したが、投票システムの変更によっても有利不利がわかれるため、こうして6月に行われることになったのだ。
選挙直前には現職のドゥダ大統領がコロナウイルスによるパンデミック後、
他国の首脳として初めてトランプ大統領を訪米した。その際には、
在独米軍基地をポーランドに誘致することなどを表明している。こうした動向は
対ロシアへの政情にも影響することは間違いない。
筆者個人の感想としては、コロナウイルスの影響で他国の選挙戦を目の当たりにしたことで、都知事選や総選挙への見方も変わるのではないかと感じた。少なくとも、
「この政党は愛国的」といった報道の仕方には、これまで以上に注意を払っていきたい。
<取材・文/林 泰人>