コロナ禍で国境封鎖の北朝鮮。観光解禁は来春までずれ込む可能性も。絶たれる外貨獲得の手段

全面中止の可能性大なマスゲーム

異例のロングラン公演となった2019年マスゲーム

異例のロングラン公演となった2019年マスゲーム

 さて、北朝鮮旅行の再開が晩秋になると気になるのはマスゲーム公演がどうなるかだ。北朝鮮観光関係者からは言及がなかったそうだが、準備期間を考えると冒頭の旅行代理店関係者の嘆く声の通り、今年のマスゲームは全面中止の可能性が高そうだ。  2018年に復活したマスゲーム公演は、言わずとしれた北朝鮮最大の外貨獲得イベントだ。特に国連の経済制裁が強化された昨年は史上初となる5か月間に渡る超ロングラン公演を実施している。  観光業は国連制裁の対象外のため今年もマスゲームは昨年並のロングラン公演が予想されていたが、開催自体が取りやめになりそうだ。  10万人で演じるとされる大マスゲームは、北朝鮮の観光関係者曰く練習に半年ほど要するとされる。しかし、昨年などは3か月間ほどの練習期間だったのではないかとの推測もある。  もし、10月末にマスゲームを限定開催するとしたら逆算で7月末には練習を本格的に始めている必要があることになる。現在、北朝鮮も新型コロナウイルス感染対策も実施しているので集団での練習は難しいかもしれない。何よりも10月末になると平壌は、最低気温が氷点下になる日も出てくるなど寒い。屋外で公演は、演者も観客も厳しいものがありそうだ。

来春まで観光客受け入れをしない可能性も

 仮に11月上旬に観光入国を解禁したとしても今年は観光客受け入れをせず、そのまま来年春まで休眠させるのではないかと旅行代理店は話す。  「北朝鮮の冬季は元々観光客が少なく、集客力あるイベントも少ないですから、観光地の整備や暖房費を考えるとそのまま冬季も観光客の受け入れを停止する可能性もあります」(北朝鮮旅行の代理店)      今年は冬季だけでなく年間通して集客できる目玉施設として、陽徳温泉リゾート施設を1月にオープンさせたが早々に閉鎖した。  冬季、北朝鮮で楽しめるのは、カウントダウンツアー、陽徳温泉(今年1月時点では中国人限定)、馬息嶺スキーリゾートなどが冬季観光のタイミングやスポットとなりそうだが、いずれも燃料コストの関係でコスパは悪そうだ。  そうすると、晩秋の国境解禁後は観光客を無理して受け入れず、滞っている貿易再開を優先させて貿易商など出張者、北朝鮮にとって重要な友好訪問団など非観光客を先に受け入れ、一般観光客の受け入れは、一番最後となり来年に…となるかもしれない。 <取材・文・撮影/中野鷹>
なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID@you_nakano2017
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