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原油暴落 史上初の「マイナス価格」!?原油暴落の原因と“今後”
4月20日、NY原油先物は歴史上初となる「マイナス価格」をつけた。コロナの影響で輸送用エネルギー需要が世界的に落ち込んだのが主要因だが、背景には減産を巡る産油国の駆け引きがあった……。
楽天証券経済研究所の吉田哲氏は、各国の思惑をこう解説する。
「3月のOPEC(石油輸出国機構)プラスの会合が決裂し、協調減産は同月での終了が決まり、サウジが一転、大増産に向かった。先手を打たれたロシアもサウジに続き、多くの産油国は薄利多売に舵を切りました。一方、今や最大の産油国となった米国では、シェール企業が打撃を受け、社債市場の混乱やエネルギー関連株の下落を招いた。トランプは原油価格を引き上げたいが、大統領選の最中でもあり、安いガソリン価格は有権者のメリットになっている。こうした事情から米国は原油価格の引き上げに動くでしょうが、急騰は望んでいません」
新興国の需要増を背景に、’08年に史上最高値の147ドルを付けた原油だが、国際エネルギー機関(IEA)の予測では’30年に需要のピークを迎える
5月中下旬にかけて、原油1バレル=30ドル付近まで回復している。
「短期的には、欧米の金融緩和による経済の回復期待から、原油相場は反発する可能性があります。長期的には、世界はコロナと共存する“新しい生活様式”にシフトし、在宅勤務が通常になるなど社会がスマート化すれば、進んでこなかった脱炭素化が飛躍的に進む可能性がある。石油の消費量は減少し、かつての70~100ドルといった価格帯ではなくなるでしょう。ただ、あまりに安いと金融市場に悪影響を及ぼすので、10~50ドルという新しいレンジで推移すると思います」
コロナがエコに貢献する構図は、何とも皮肉な話だが……。
<取材・文/¥enSPA!>