トランプ米大統領(左)vs.コロナの様相を呈してきた大統領選。バイデン前副大統領にもセクハラ・スキャンダルが噴出し、いよいよ先行きは不透明に…… 写真/AFP=時事
米国大統領選“オクトーバー・サプライズ”がコロナ禍の大統領選を左右する
新型コロナのパンデミック前、11月の米大統領選の下馬評では、トランプ大統領が、民主党の候補指名が確実視されるバイデン前副大統領を相手に優勢を保っていた。だが、米国国内の感染拡大に伴い、株価は暴落。失業者も急増するなど逆風が吹き荒れているのだ。現地の情勢調査に定評のある明治大学教授の海野素央氏が話す。
「トランプ大統領のコロナ対策は、大統領選再選のための活動と化している。自宅待機命令が出ているミシガン、ミネソタ、バージニアを『即時解放せよ!』と迫ったのも、この3州は知事が民主党系のうえ、大統領選の激戦州だから。『WHO(世界保健機関)は中国寄り』と資金拠出を一時止めたり、『ウイルスは中国の武漢ウイルス研究所から漏れた』と、中国叩きを強めているのも大統領選に勝つためにほかならない」
4月の各種世論調査の平均では、トランプの支持率が42・0%、バイデンが48・3%と僅差ながら逆転したものの、選挙戦の行方はまったく見えない。
「バイデンが勝利するには、大統領選から撤退した左派・サンダース上院議員を支持する若者を取り込むのが大前提。そのうえで、選挙直前の10月の失業率が悪い数字なら、トランプに不利に働く。また、共和党と民主党の支持層が重なる大票田を取れるか。フロリダ州はリタイアした富裕層が多く、アリゾナ州は移民が多く、高齢者と移民の人気が高いバイデンに勝機がある。さらに、コロナ第2波が秋に訪れれば、トランプには逆風が吹く。過去の大統領選で何度かあったオクトーバー・サプライズが起きれば、バイデンが勝利する可能性が高い」(海野氏)
投開票1か月前の攻防に注目したい。
<取材・文/¥enSPA! 写真/AFP=時事>