コロナショックで歴史的マイナス成長時代が到来。移動制限は航空業界を直撃も

U.S. NEW YORK STOCKS

3月16日、NYダウは、過去最大の2997ドルも暴落。株価は戻りつつあるが、実体経済の回復は伴っていない…… 写真/Avalon/時事通信フォト

 コロナショックによる世界経済へのダメージは計り知れない。秋には感染拡大の第2波も懸念されるが、先進国は徐々に社会・経済活動を再開させている。先が見えないなか経済は立ち直れるのか?

コロナショック ウイルスの世界的な感染拡大で歴史的マイナス成長時代が到来

 今年の世界のGDPは「マイナス3%」―。  新型コロナのパンデミックを受け、IMF(国際通貨基金)が4月に発表した数字は衝撃的だった。だが、この数字は今年後半に感染が収束することを想定したもの……。パンデミックが長期化した場合、世界のGDPはさらに3%減少し、第2波の再来でパンデミックとなった場合は8%も下押しするという。果たして、世界経済はコロナ禍を克服できるのか? 法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が話す。 「世界経済は、かつてない打撃を受ける可能性が高い……。特に、これまで世界経済を牽引してきた国の景気減速が懸念される。史上最長の好景気が続いた米国では雇用が急速に悪化し、ムニューシン財務長官は『政府の対応がなければ、失業率は20%に達する可能性もある』と見解を示した。一方、中国も成長の限界を迎え、米国の緩やかな景気回復に依存して安定を維持してきた経済は深刻な状況にある。各国が国境を閉じて、主要都市が封鎖され、人の移動が絞られるなかでは財政・金融政策を総動員しても、需要創出効果は見通しづらい」  実際、米国では、4月の失業率が統計開始以来最悪の14.7%を記録し、中国は5月の全人代(全国人民代表大会)で、これまで行ってきた成長率の目標設定を見送った。  真壁氏が続ける。 「移動制限により、世界各国で需給バランスが崩れている。特に、米国経済は楽観できない。3月中旬以降、株価が反発する局面が見られはするものの、実体経済は非常に厳しい状況だからだ。3月、米国の新規失業保険の申請数は、史上最多の328万人に達したが、今後も増える可能性が高い。一方、欧州経済も深刻です。感染収束まで長期化すれば、単一市場をつくることで効率的な経済運営を実現しようとしてきたが、国境封鎖や外出禁止によってEUの機能は大きく低下した。財政規律を重視するドイツが支出拡大に舵を切ったが、外出制限が続くなかでは効果は不透明だ」

いち早く経済活動再開した中国の動きが欧州のリスクに?

 中国はいち早くコロナの封じ込めに成功し、経済活動を再開しているが、中国の動きが欧州のリスクになる可能性があるという。 「3月、中国のPMI(購買担当者景気指数)は、早々とボーダーラインの50を上回ったが、これは過剰生産能力が維持されている証し。中国は過剰な生産設備や債務問題を抱えるので、とにかく生産して収益を得たい。さらに、中国政府は雇用悪化を防ぐため、中小企業向けの資金供給を強化し、過剰生産を後押ししている格好だ。世界的に需給が崩れるなか、中国が供給を増やせば、物価はさらに伸び悩む。中国に依存してきたユーロ圏で、デフレリスクが高まるだろう」(真壁氏)  経済へのダメージは「歴史的」と言っていいようだ。真壁氏が話す。 「世界のGDPが約15%も減少した世界恐慌に匹敵する損失を被る可能性は否定できない。回復に向かうにしても、V字型ではなく、U字型、あるいは最悪L字型になる可能性さえある」
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移動制限直撃の航空業界は早くも崩壊寸前
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