RAW:「でも、俺はそう思うっす。
そこまでの痛みじゃない、我慢できると思うんです。俺も中2のときに、自分たちのグループ作って、そこで抗争が起きてリンチとかハブりもあったんですよ。でも、ネチネチしたことはしなかったんで。
面と向かっていってぶん殴るか、ぶん殴られるかのどっちかじゃないですか」
——まあ何がリアルかっていうのは難しいですよね。
RAW:「不可抗力とか、理不尽とか、そういうのを受けたんならわかるっすよ。だけど、『
普通にスゲえいいとこで育った奴が、何言ってるんだよ』っていう。もちろん
貧乏な奴もいるし、それを売りにしてもいいけど、同情はよくないと思う。自分の使い方とか、お金の使い方は綺麗にしないと」
正社員:「俺が印象的だったのは、去年RAWAXXXが負けたときに、『
もっとズルいことすればよかったじゃん』って話をしたんですよ。例えば
『俺を優勝させたらダンジョン出るぜ! 俺が次のモンスターだ!』とか言えば、勝てたんじゃないかって。それでまたKOK(キング・オブ・キングス)に出るって話を聞いたときに、『
ズルいことしてでも優勝したほうがいいよ』って話したら、RAWAXXXは『
絶対ズルいことはしない』って言って、本当に優勝した」
RAW:「
ギャンブルにインチキはないんで。実力は運もあるんですけど、その運も信じないと、まとめて自分が出ちゃうから。
自分を信じてない奴は、そうやってインチキするんですよ」
正社員:「うるせえよ(笑)。でも、言うたら今回は運もよかったよね。
神がRAWAXXXを選んでる感あった」
RAW:「運よかったっていうか、
SNSをやめてよかったっす。ブワッて言っちゃうんで、『何言ってんのコイツ』ってなっちゃう」
——これまで数回に渡ってご自身やシーンの現状を語っていただきましたが、社会全体について何か感じることはありますか?
RAW:「
日本人はどうかしてるよ。おかしいだろ、今マジ。
惑わされてるけど、冷静になれば、みんなもっと頭いいから。会社もキツすぎるし、『
みんなどんだけ働いてるの』って感じですよね。田舎の俺らからしたら、会社のビルの下に地下鉄の駅があるとか、どブラックですよ。『
それでアンタたち、いくらもらってるの?』っていう」
正社員:「前に俺の昔の会社の
給与明細見せたけど、ブラックすぎるでしょ?」
RAW:「ふふふ……。
みんなどんだけ頑張ってもお金増えないのが現状ですよね。俺らの世代は、ちょうど
小泉純一郎の郵政民営化とかの政策がありましたけど、ああいうのとか序の口ですよね。
小泉が根こそぎ変えていって、あいつからパフォーマンスの時代みたいなのが始まったじゃないですか。職人気質の奴を減らそうとして、ゆとり教育を作って、混沌とした」
——現状を辿ると、あの頃に社会が変わってきたと言われますよね。
RAW:「俺らの時代って『
学歴も必要なくなるよ』って言われてたんですよ。『みんなフラットだから』って。それでしばらくしたら、『
大卒じゃないと仕事ないから、派遣になりますよ』と。その期間、
職人さんを育てられなかったから、みんなずっと派遣とか契約社員で。俺らの10歳上とかも就職難でハングリーですけど、俺はそういう精神が必要だと思ってます。『
みんな仕事辞めりゃいいんだよ』みたいな。みんな辞めりゃ日本の企業みんな潰れるけえ。
金持ちの仕事は潰しゃええねん」
反逆のカルチャーたるヒップホップを語り尽くしてくれてRAWAXXX。ヒップホップシーン、そして日本社会は彼の予言通りになるのか? 今後もRAWAXXXの言動に注目してほしい。
<取材・文/HBO編集部>