蓮舫議員「時代はクラウド」発言を騒ぎ立てる人が覆い隠したい「重大な問題」。信号無視話法分析で明らかに

原因と再発防止策の説明も受けずに追加予算9.3億円を渡す愚

 続いて蓮舫議員は、システム障害の原因や再発防止策の説明も受けないまま、補正予算で9.3億円もの予算を計上したことを問題視し、その適切性を高市総務相に問う。その質疑は以下の通り。 蓮舫議員:「あのね、地方公共団体情報システム機構法では総務大臣は何か問題があった時に機構に報告あるいは立ち入り検査を命じることもできるんですよ。ね? 職員から聞くんじゃなくて一体何が問題だったんだ。これからどんどん普及していくんだから2度と同じようなトラブルが起きないようにしなきゃいけないんですよ。なのにその説明も聞かないで、原因を詳細に分析をしないで、この補正予算案で9.3億(円)。さらに予算をこの機構に渡す。適切ですか?」 高市総務相「私は、あのー、ほぼ毎日、えー、 衆議院参議院で国会対応もしておりましたので機構の営業時間中にですね、業務時間中に、まあ直接機構に行くとか、まあ呼んで聞くとかいうことはできませんでした。まあ、実際できませんでした。まあ、しかし総務大臣がこの機構から報告を受けるということにつきましては職員が聞き取りをして私に報告をしてくれるということでも、まぁ、これは、あの、それに代わることだと思います。(赤信号   まあ、十分にここは、あのー、どういうところで、えー、処理能力が弱かったのかということで、まあ、具体的にサーバーの増強台数につきましても電子証明書情報を作成するための RAサーバーですね、これを現在4台ですが12台にさせて頂く。電子証明書の作成などを行うCAサーバ、えー、現在2台ですけれども6台に増強させて頂くということでこの金額になっております赤信号」 ※「今の答弁、開き直りでしょう。指導してください」と国民民主党・森ゆうこ理事が委員長に抗議するも、自民党・金子原二郎委員長は抗議を無視して蓮舫議員を指名 蓮舫議員:「サーバは増やすんじゃなくて、時代はもうクラウドなんですよ。だからね、これまでの積み上げてきたもののベンダーのつぎはぎのシステムじゃなくて本当に問題がどこにあるかというのを確認をして、それで予算付けをするなら分かるけども、言われたがまんまにお金を支払う。税金は限りがある。大臣、これしっかり(地方公共団体情報システム)機構の人を呼んで確認をして、そして本質的な改善策を講じて頂きたいと改めてお願いいたします。なぜならこの機構はシステム独占だけじゃなくてマイナンバーカード発行も独占してるんですよ。令和2年度の予算案、711億(円)がマイナンバーカードを発行したら地方自治体を通じて国から税金で補填される。収入の7割ですよ。カード発行すればするほど潤う機構なんです。潰れない機構なんです。」  高市総務相は2段落ともに論点をすり替えており、赤信号とした。 1段落目 【質問】原因究明前の追加予算計上の適切性 ↓ すり替え 【回答】原因究明しなかった事情 2段落目 【質問】追加予算計上の適切性 ↓ すり替え 【回答】追加予算計上の内容  答弁後に森ゆうこ議員が「今の答弁、開き直りでしょう。指導してください」と金子原二郎委員長に抗議した通り、高市総務相は「追加予算計上の適切性」という観点では質問に一切答えていない。また、「システム障害が起きた原因として処理能力が弱かったため、物理サーバの台数を増強する」という趣旨の答弁をしている。この答弁を受けて、蓮舫議員は「処理能力を上げるのであれば、物理的なサーバ台数を増強するのではなく、現代ではAWS等のクラウドサービスもある」という趣旨で「サーバは増やすんじゃなくて、時代はもうクラウドなんですよ」という問題となった発言に繋がっている。  以上が蓮舫議員がクラウド発言に至った約4分間の質疑の全容である。 「クラウドであってもサーバを必要とするのに蓮舫はクラウドの仕組みを理解していない。IT音痴だ。」という批判がいかに的外れかご理解頂けただろうか?

ネトウヨの尻馬に乗って騒ぐ議員

 しかしながら批判に乗っかった国会議員が複数いた。質疑の内容を理解できていないか、意図的に蓮舫議員をデマで貶めようとしたかのどちらかであろう。 NHKから国民を守る党・丸山穂高議員のツイート(6月11日10:22): ”蓮舫議員が「サーバーは増やすんじゃなくて、時代はもうクラウドなんですよ。」とかいってるし、ほんと国会ってIT系弱すぎるな。クラウドをサーバー以外のどこに置くの?笑 給付金オンライン申請のシステム障害原因がサーバー容量の問題で、政府は鯖増強すると。昨日衆院通過の補正予算を参院審議中。” 日本維新の会・音喜多駿議員のツイート(6月11日13:11): ”「クラウド蓮舫」ってトレンドは何事かと思ったら、国会中継でこんな迷言が飛び出してたのか>蓮舫議員「時代はサーバーじゃなくてクラウド!」 …そのクラウドはどこに置くのだろう。苦手分野でイキらない方が良いですね。明日は我が身、気をつけよう。” 自民党・小野田紀美議員のツイート(6月11日19:21): ”長かった予算委員会終わりにトレンドにクラウドってあったから某ストライフさんかと思っていそいそ見に行ったのに…ナンダヨー(´・ω・`)”  特に自民党・小野田議員に至っては参議院予算委員会の委員であり、この質疑を現地で聞いているにもかかわらず的外れなツイートをした点は指摘しておきたい。  そもそも、この質疑においてクラウド発言は議論の本質とはほとんど関係がない。  マイナンバーカードは今夏の普及目標を4000万枚と設定しているにもかかわらず、わずか5%にあたる200万件のオンライン申請でシステム障害が発生したこと。その原因と再発防止策を総務大臣が説明すら受けないまま、9.3億円もの追加予算を計上したこと。その追加予算の中身が物理的なサーバー台数の増強であること。そもそもシステム障害を起こした地方公共団体情報システム機構はこのシステムだけではなく、マイナンバーカード発行も独占してカードを発行するほど潤う仕組みになっていること。  これらの方がはるかに大きな問題ではないだろうか? <文・図版作成/犬飼淳>
TwitterID/@jun21101016 いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。
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