歓迎ムードの「通勤レス」なリモートワーク。社会への普及・定着が招く不都合な未来像とは……?

テレワークイメージ

UDON-CO / PIXTA(ピクスタ)

定着しつつあるテレワーク

 新型コロナによる緊急事態宣言で、自宅からのネットを介した勤務、通称“リモートワーク”を体験した人も多いと思います。フリーランスのライター&編集である筆者も、友人から「お前は、今までこんなに楽に働いてきたのか、ひどい目にあえ」と心温まる罵声を浴びせられました。  リモートワークが普及し、これから定着するのかについてはこれから精査していく問題かと思いますが、ひとまず現在リモートワークを導入している企業のうち実に8割がコロナ禍を受けての導入であり、調査企業のなんと75%は何らかの形でリモートワークの導入を決断したという。(リンクライブ調べ)  その調査結果も、導入に満足している人は不満な人に比べて3倍以上を示し、ダルイ終業後の飲み会にも参加しなくてもいいしサイコーというのが大方の実感ということになりそうで、ひとまず「その気持ちわかります」と言っておきます。  コロナウイルスに対する医学的対策の道筋が依然見えないまま、何となくの終息ムードの現在。リモートワークは一時の勢いを減らししつつも、企業の危機管理の観点からも一定の立ち位置を占めていくことになりそうです。  そんなこんなで、なし崩し的に普及した形のリモートワークですが、なぜ、大企業を中心にさまざまな問題をはらみつつも短期間に実施できたのかを考えておいてもいい時期じゃあないでしょうか。

テレワークはもともと政府主導の“働き方改革”

 「リモートワークってそもそもなんだよ」という混乱もそう起きないまま、どうして書斎もない日本の住宅環境でも比較的スムーズに移行できたのでしょうか?    それは、提言はされたもののあまり進まなかった総務省の“働き方改革”の中、テレワークとして大きなイシューを占めていた施策であったことが要因に思えます。ある一定規模以上の企業では、あらかじめ対応策や導入の道筋が検討されていたがゆえに、今回のようなイレギュラーな事態でもなんとか移行できたように見えのです。    総務省の言うテレワークは、モバイルオフィスや、サテライトオフィスなどの概念を含み、地方での就労・雇用創生の文脈と、ワークタイムバランスの実現の文脈も含まれるのだけど、今回のコロナ禍ではざっくり「通勤の排除」という形で現れたというわけ。  プレミアムフライデーが盛大にコケた結果、政府主導の労働改革は、大企業だけが実施できる“絵に描いた餅”な印象が強いままです。その中で、社内コンプラがリモートワークでは守らせることができず情報統制がグズグズになったよ、とか問題もはらみつつも、このリモートワークは、コロナの影響でなし崩し的に普及し労働者側も「ラク」という圧倒的なメリットを享受したため、これからの働き方に一定の存在感を示すことになりそうではあります。  しかし、目の前に転がる「通勤が無くてラク」という巨大すぎるメリットにコロッと転ぶと、数年後にひどいしっぺ返しを食らうのではないかと筆者は強く危惧しているのです。
次のページ 
政府主導の労働改革、喜ぶのは竹中平蔵だけ
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会