msdtn.jpやmastodon.cloudが「対応が困難」としてサービスを終了
ネットの誹謗中傷に対して、被害者側の立場から、どう加害者を特定しているのかということを書いた。この問題は、被害者と加害者の立場以外にも関係する人々がいる。サイト管理者やインターネット接続業者だ。
こうした事業者は、自動化されたシステムがなければ個別の案件に人手が発生する。既に自動化している企業ならともかく、そうでない場合は、今後案件が増えれば対応コストが増大する。
今回の『テラスハウス』の件で、そうしたことを感じさせる話も、ネットで見ることになった。「
mmsdtn.jp / mastodon.cloud サービス終了について」という情報だ。mmsdtn.jp、mastodon.cloud の両者は、分散型SNSとして一時期注目を浴びた mastodon の有名サーバーだ。
以下、記事内容が、今後保全されるか不明なので転載をおこなう。
> 【重要: msdtn.jp / mastodon.cloud サービス終了について】
> ここ最近、インターネット上おける誹謗中傷に対する対応について、各社のニュース・SNS等で話題となっております。
(中略)
> これらの影響に伴い、今後、訴訟や開示請求がより一般的となることや、政府機関からの対応強化の指示、並びに法制強化などが実施される可能性が予想されます。
>
> しかしながら、弊社の現在の体制ではそのような場合の事務負担増に耐えきれず、適切な対応が困難なことから、mstdn.jp ならびに mastodon.cloud について、2020年6月30日をもってサービス提供を終了することにいたしました。
その後、譲受希望の問い合わせが複数あり、米国の企業へ譲渡することを決定したという情報が同ページに出ている。どちらにしろ、手放すタイミングを計っていたところに、「誹謗中傷対応のコスト増」という言い訳ができたのだろうと想像できる。
ちなみに、記事執筆時点の mmsdtn.jp 、 mastodon.cloud の運営元は、合同会社分散型ソーシャルネットワーク機構である。この会社は、前の所有者である合同会社きぼうソフトから、2019年07月16日付けで設立された新会社だった(参照:
ITmedia NEWS)。そして、合同会社きぼうソフトは、2019年12月5日の時点で破産手続きをおこなっている(
財経新聞、
倒産情報-JC-NET)。
今後、SNSやブログ、ネット掲示板は、こうしたコストを適切に払える企業のみしか運営できなくなっていく可能性がある。健全なことではあるが、野良の活動が減り、大手のさらなる独占や寡占の追い風になるかもしれない。
<文/柳井政和>