海の向こうの人種差別に憤るだけでなく、我々の社会にある差別を考えよう

George Floyd protest in New York

(Photo by Tayfun Coskun/Anadolu Agency via Getty Images)

多くの人が声をあげ始めた「#BlackLivesMatter」

 George Floyd の死から始まったデモ、そして怒りの声は、全米でさらに広まり、とどまっていません。 〈参照:8 Minutes and 46 Seconds: How George Floyd Was Killed in Police Custody|nytimes〉  暴動ばかりがクローズアップされますが、多くの方々は様々な形で連帯を示しています。警察官、軍人、市長、知事など、立場を変えた多くの人が、デモに賛意を示し、何ら有効なメッセージを発しないドナルド・トランプ大統領を批判しています。  マイケル・ジョーダン、マティス前国防長官など、これまで頑なに政治的話題に沈黙してきた人たちすら、です。  語ろうと思えば、いくらでもこの件に関しては「冷静に」「客観的に」書くことも出来ます。しかし、今日はそれについて話すつもりはありません。  この #BlackLivesMatter をどこか遠いものとして考え、「アメリカは怖いね」「黒人は大変だね」などと思っている人も多いかもしれません。  しかし、今日書くのは、我々が今暮らす日本社会の話です。

わたしの隣の差別

 僕は京都市左京区で生まれました。左京区には北白川という場所があり、そこには京都朝鮮学校があります。小学校低学年の頃だったと思いますが、彼女たちの通学路は僕の家の近くで、鮮やかな民族衣装で投稿する学生の姿をよく見ました。  いつだったか、というのは明白には覚えていません(Wikipediaを見ると、概ね1999年頃の話だと思います)が、この民族衣装を着用する学生はいなくなりました。  1994年に起こった「チマチョゴリ切り裂き事件」の影響です。当時はよく事情がわからず、なんとなく寂しい思いをしていたくらいでした。  しかし、今考えれば、1987年に大韓航空機爆破事件が起こり、1994年に核開発、1998年にはテポドンが発射され、やがて2002年には拉致被害者の帰国、と、加速度的に日朝関係が悪化する中に彼らがいたことがわかります。(この辺の雰囲気は、群像新人文学賞を受賞された『ジニのパズル』を読むとよく分かると思います)  当時の僕にはよくわからない話でしたが、一つ隔てた場所に、暴行され、暴言を吐かれていた人たちがいたことは、容易に想像されます。  正直に言うと、そんなことは想像できませんでした。  京都の小学校というのは、かなり人権教育をしっかりするところでして、あんまりそういう雰囲気はよくわかっていなかったし、そもそも接点もありませんでした(もしあの時代スマートフォンがあったら、どうなっていたかわかりません)。  想像できるようになったのは、もっとずっと後のことです。
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憎悪と恐怖と手段
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