5月4日からは、2大組合が経営者側が方針を明確するまでストを行うとして無期限ストに突入した。いつも協力的な姿勢を示して来た労働組合が遂に爆発したのである。40年存続して来た工場で初めて無期限ストを実行したののだ。それに対して経営者側では沈黙を守るだけであったので、従業員の方では工場の閉鎖はほぼ確実だと感じるようになっていた。しかし、彼らは最後まで奇跡を信じていたのであった。
ヨーロッパ日産社長ジャンルカ・フィッシの任務は今年12月までに工場閉鎖を終了して従業員らとの補償問題なども解決済みにすることである。しかし、事態はそう簡単には収まらない様相だ。カタルーニャ州政府は従業員の社会保障費負担を軽減するためにこれまで3億ユーロ(360億円)の支援金を提供。更に、この12年間に2500万ユーロ(30億円)を州政府は投入し、600万ユーロ(7億2000万円)の投入も用意されていた。(参照:「
El Diario」)
州政府は存続のための代替案を日産本社に提示したが、それに対する如何なる回答もないという。州政府のアラゴネス副州知事は日産の撤退は容易にはさせないという構えだ。つい先日、州政府は撤退するには当初10億ユーロと概算していたが、そのあと修正して12億6000万ユーロ(1500億円)の費用が掛かるとメディアで明らかにしている。従業員への解雇保障だけでも6億ユーロ(720億円)を見積もっている。これが意図しているのは撤退するよりも残留した方が費用は安く済むと言いたいようである。(参照:「
Cinco Dias」)
日産が撤退を発表して最初に開かれたヨーロッパ日産社長フィッシら経営者側と従業員を代表する委員会の会合の席で委員会側からなぜ撤退するのかと問いただすと経営者側は15分で退席したそうだ。恐らく、嫌悪な雰囲気の中での会合だった故に委員会側からの質問の仕方にも問題があったのかもしれないが、15分で経営者側が退席したというのは今後の交渉を進める上でプラスにはならない。(参照:「
20minutos」)
スペイン政府の極左ポデーモスの党首で第3副首相であるパブロ・イグレシアスは国営化も可能だと言った非現実的でユートピアの発言もある。しかし、日産本社が望んでいるような12月までに閉鎖したいという希望は恐らく達成されないであろう。交渉は来年まで持ち越されるのは確実だと思われる。
<文/白石和幸>