リーマンショック時、バフェットは「米国を買おう。私は買っている」と積極的に投資し、名を馳せた。しかし今回は売却するだけで、目立った買いはない。バークシャーの現金保有高は、過去最大の約15兆円にまで膨れ上がっている。
「コロナ禍で3月に1万8000ドル台まで落ち込んだダウ平均も現在は2万4000ドル台に回復。いくら短期的な相場は関係ないと言っても、
ここで買えていないのはバフェット氏らしくない。手放した航空株も、政府の支援もあり反発しています」(岡元氏)
尾藤氏は「
リーマンの“失敗”が尾を引いている」と分析する。
「バフェット氏はリーマンショック時に、金融株への投資で大きなリターンを得ていますが、手を差し伸べるのが早すぎた。株価は半年後に、さらに3割も下がったので、『ひどいタイミングだった』と後悔しています。その苦い経験があるので、今回は2番底が気になり、動けなかった。その間にFRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長が無制限の量的緩和政策を発表し、企業は自ら資金調達でき、バフェット氏に助けを求める案件が来なかったという面もあります」
さらにここ数年、バフェットはS&P500指数にも負けている。
「特に昨年はS&P500は30%近く伸びましたが、バークシャーは約12%と見劣りします。しかし企業本来の価値を分析し、市場価格とギャップのある割安株を買うというバフェット氏の投資哲学は間違っていません。保有しているシリウスXMホールディングスやチャーター・コミュニケーションズはアフターコロナでも値上がりが期待できます」(岡元氏)
また尾藤氏は「コカ・コーラを永久保有銘柄にするようにバフェット氏はブランド価値を重視します。アップルはまさにバフェット氏の好みで、安定して成長していく可能性は高い」と話す。
総会で「決して米国の成長に逆らう賭けをしてはいけない」と語ったバフェット。“神様”のお告げは健在であることが、これから証明されるだろう。
【マネックス証券チーフ・外国株コンサルタント・岡元兵八郎氏】
ソロモン・ブラザーズ証券(現シティグループ証券)、SMBC日興証券を経て現職。著書に『日本人が知らない海外投資の儲け方』(ダイヤモンド社)
【びとうファイナンシャルサービス代表取締役・尾藤峰男氏】
金融機関から完全に独立した資産運用アドバイザー。個人の金融資産や退職金の運用助言・ライフプランニングサービスを投資助言料のみで提供
<取材・文/斎藤武宏>