コロナ中退2割の衝撃。バイト収入ゼロで大学生が大ピンチ!

学生は甘えてなんかいない!

「『甘えてる!』と批判する人は、現実をまるでわかっていない」  困窮する学生の問題に早くから取り組む立憲民主党の塩村あやか参議院議員は、こう憤った。  支援を求める学生に対して、おじさん世代を中心に「学生の甘え」と窘める声が多く上がっている。萩生田光一文科相が報道番組で、学生が求める国の財政支援による学費減免策に対して「目、覚まして」と発言した*のが象徴的だ。 〈*学費減免「目覚ませ」 文科相 要望敵視 撤回求める テレビ発言 学生ら批判|しんぶん赤旗〉 「全国大学生協連によれば、’90年代には仕送り額10万円以上の下宿生が6割以上を占めていたが、現在は3割までに激減した。多くの学生は少ない仕送りをアルバイトで補塡して、何とか学生生活を送っており、バイトがなくなれば瞬く間に困窮する……。『学生を甘やかすな!』と言うが、’90年代に学生時代を過ごした世代の大多数にとって、バイトは小遣い稼ぎでした。一方、今の学生は学費や生活費を稼ぐために働いている。決して甘えてなんかいません」  甘えていないからこそ、バイトが激減するなか、やむを得ず怪しげな仕事に就く女子学生が後を絶たない。塩村議員が相談を受けたのは、東日本の私立大生(21)。  学費と家賃は親が負担し、生活費と高額な教材費は自身で賄うため、コンビニとラウンジホステスのバイトをしていたが、自粛ムードが漂い始めた2月中旬、客が激減したラウンジは休業に。コンビニのシフトを増やそうにも、働き手がコンビニに流れ込み、月2万円ほどにしかならない。貯金は減る一方だが、弟も大学に入学し、親に助けを求められなかった……。  仕方なく「チャットレディ」のバイトを始めたが、「性的行為はない」と言われていたのに、実際は違った。精神的に追い詰められ、4月に辞めたが、ギリギリまで切り詰めた生活を送っている。  困窮する学生が増え、学生支援の動きが全国に広がるなか、5月19日、政府は最大20万円を支給する「学生支援緊急給付金」の策定を閣議決定した。予算は530億円、対象は43万人というが……。 「給付されるのは、6つある条件のすべてを満たす学生に限られる。特に、問題なのは『家庭の収入減少等により、家庭からの追加的支援が期待できない』という項目で、これでは学生本人が困窮していても、親の収入が減っていなければ支援金を受け取れない。本来、学生を支援する制度なのに世帯収入を物差しにしており、ピントがズレていると言わざるを得ません。政府は様々な要件を課し、対象を狭めている。給付されない学生が多くなるのは明らかです」 【石渡嶺司氏】 大学ジャーナリスト。大学、就職、キャリアをテーマに取材、執筆。『大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)ほか著書多数 【渡辺寛人氏】 ブラックバイトユニオン代表。NPO法人POSSE事務局長。社会福祉士。共著に『断絶の都市センダイ』(朝日新聞出版) 【塩村あやか氏】 ’78年、広島県生まれ。高校在学中よりCMモデルなどで活躍。短大卒業後、放送作家を経て、’13年、東京都議に。’19年より参議院議員 <取材・文/斎藤武宏>
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