多くの人に遊んでもらいたい。だからこそ、ゲームづくりにおける色盲・色弱の人へのケアを考えてみた

カラー

Karolina Grabowska via Pixabay

Webに公開していたゲームの色が見づらいと指摘された

 世の中は、新型コロナウイルス一色の感じである。その中で、少し日常に寄せた話をしたいと思う。日常といっても、多くの人にとっての日常ではない。私自身の身近なことだ。  私はゲーム作りが趣味だ。小学生の頃から続く趣味で、当時はアナログだったが、現在はデジタルゲームが中心だ。こうした趣味の一環として、変形盤面で遊べるリバーシを作り、公開している。  ある時、このWebゲームについて Twitter で感想をもらった。「置けるところは赤だと思うが、色盲には見辛い」といった内容のものだ。ああ、これは配慮に欠けていたと思い、その日のうちに改良した。  原因は非常に分かりやすい。一般的なリバーシゲームの盤面は緑だ。その上に、自分の手番では赤色、敵の手番では青色で、置けるマスを表示していた。赤と緑の判別が難しい色覚異常の人には、区別が付きにくい。解決方法として、色以外に、記号も表示した。改良を伝えると「とてもいいです」と返信をいただいた。  ゲームでは、色で情報を伝えることが多いが、これは注意を要する。たとえばアナログゲームでは、色だけでなく形などでも違いが分かるように、デザインすることが多い。カードゲームなら、色違いのカードに、それぞれに対応したマークを入れるなどだ。  デジタルゲームでは、画素数の問題から、形で区別することが難しいこともある。また、形を変えるとコストがかかったり、視認性の問題から難しい場合もある。ただ、より多くの人に快適に遊んでもらおうとする場合は、こうした工夫が必要になる。  今回の件を反省するとともに備忘録的に、目と色について話を書こうと思う。

人間の目の仕組みと色覚異常

 人間は、目を使って物を見る。目には、昼に働く錐体(すいたい)細胞と、夜に働く桿体(かんたい)細胞がある。錐体細胞は人間には3種類あり、色を見分けることができる。桿体細胞は1種類で、わずかな光でも感知できる。  人間が見ることができる光は、波長によって異なる色として認識される。可視光のうち波長が短い順に、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤として見える。これは虹の色の順番と同じだ(参照:コニカミノルタ日立ハイテクサイエンス)。  前記の4種類の細胞は、それぞれ特定の波長に感受性のピークがある。その感受性は、なだらかな山のようなカーブを描き減衰する。夜に働く桿体細胞のピークは、青寄りの緑で、その周辺の波長の光をよく感じ取れる。そのため、暗闇の非常灯は緑色になっている。  昼に使う3種類の錐体細胞には、S錐体、M錐体、L錐体の名前が付いている。それぞれ、Short、Middle、Long の 意味で、短い波長、中ぐらいの波長、長い波長を表している。S錐体は、藍色あたりにピークがあり、M錐体は緑色の真ん中あたり、L錐体は緑色の黄色寄りあたりにピークがある。  3種類の細胞は、青緑赤の三原色に直接対応しているわけでない。それぞれの細胞がどれだけ光を感じたかや、過去の経験によって、色は脳内で合成される(参照:細胞工学ナショナルジオグラフィック日本版サイト)。  実は、青緑赤の3色で世界を見ているのは、哺乳類の中では霊長類だけだと言われている。他の哺乳類は2色で、それ以前の脊椎動物は4色だと言われている。これは進化の過程で、光の認識の仕方が変化したためだ。  進化の話が出てきたので、染色体の話をしよう。人間の設計図である染色体には、常染色体と性染色体がある。常染色体は、両親から1つずつもらい、ペアで利用される染色体だ。2つセットで用いられるために、1つに異常があっても、必要なタンパク質は生成される。  対して性染色体は、女性ではX染色体が2つ、男性ではX染色体とY染色体のセットである。男性の場合、X染色体が1つしかないため、ここに異常があると、対応したタンパク質が生成されず、病気として現れやすい。  M錐体とL錐体の遺伝子は、性染色体であるX染色体上にある。そして、DNAの鎖の中でこれらの遺伝子は並んで現れる。この部分は何度か繰り返されており、様々な組換えパターンが生じている。そして上手く働かなくなることもある。このM錐体とL錐体は、よく似た設計図で、光の波長のピークも似通っている(参照:霊長類の色覚と進化academist Journal)。  この2種類の錐体細胞の遺伝子は、X染色体上にあるために、男性で問題が起きやすい。男性はX染色体を1つしか持たないために、異常があるとそのまま体に現れてしまう。そのため、男性で緑や赤の区別が付きにくい人が、女性よりも高頻度で発生する。たとえば日本では、男性は約5%、女性は約0.2%で色覚異常が見られる(参照:コトバンク)。  対してS錐体は、常染色体上に遺伝子がある。この遺伝子は、M錐体やL錐体からは遠い位置にあり独立している。常染色体なので、2つ同時にエラーが発生しない限り、問題は出ない。そのため、S染色体の異常が原因で起きる色覚異常は、そもそも現れにくい。  色覚異常には、1(P:Protanope)型、2(D:Deuteranope)型、3(T:Trianope)型の3種類がある。それぞれL錐体、M錐体、S錐体が正常に機能しないものだ。実際の先天性色覚障がいの占める率は、1型が約25%、2型が約75%となっている。多くが2型であり、1型2型含めて、緑と赤の区別が付きにくい色覚異常になる(参照:TOYO INK 1050+日本医学会 医学用語辞典)。  色覚異常は前述のとおり、日本では男性の約5%で生じるので、非常に身近な現象だと言える。
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