最大の問題は、黒川検事長が辞職しようがしまいが、あるいは安倍政権が今後も存続するかどうかともまったく無関係に、
1月31日の閣議決定が撤回されないうちは、検察庁法及び国家公務員法が改正されていない現状でも、内閣の判断で検察官の定年延長が可能であり続けているという点です。さらにいえば、政府与党が世論の反対を受けて一旦は引っ込めた検察庁法改正案が、もし仮に次期国会において否決され
廃案となったとしても、当該閣議決定において示された法解釈の効力はノーダメージで存続するはずです。つまり、
検察の独立性は今なお現在進行形で脅かされ続けているのです。
今後、渦中の黒川氏の人品の高卑や、氏に対して
「訓告」という正式な懲戒処分以下の軽微な処分に留めた政府判断の当否についてなど、おそらく問題の焦点は際限なくあちこちへと拡散してゆくことでしょう。そして
メディアなどが今回の検事長をめぐるスキャンダルについて騒げば騒ぐほど、責任の所在をうやむやにしてやり過ごし、定年延長を通じた検察官への人事介入の余地を残しておきたい現政権にとっては、都合のよい状況が到来することでしょう。
定年延長の決定権を握っている政権にしてみれば、黒川氏の代わりのような存在は、ほとぼりが冷めたあといくらでも作り出せるでしょうから。
だからこそ、わたしたちは
すべての発端となったあの1月31日の粗雑で野蛮な閣議決定がなされる前の日本を取り戻さなくてはなりません。
閣議決定を撤回させ、わたしたちの国の
検察と政府との緊張関係を旧に復さなくてはなりません。そして何より、本当に
責任を取ってしかるべき人間に責任を取らせなくてはなりません。仮に法務省からの請議を内閣として了承しただけだという説明を受け入れたとしても、閣議決定が誰の責任においてなされたのかは火を見るより明らかなのですから。
<文・GEISTE>