全く質問に答えない森大臣に対して、後藤議員は具体的イメージの答弁の可否だけを確認する。
YesかNoで答えられる非常にシンプルな問いなのだが、ここから委員会はさらに紛糾していく。その質疑は以下の通り。
後藤祐一議員:「そうすると、この委員会では具体的なイメージは答弁できないということですね? 」
森法務大臣:「
はい。あのー、具体的な基準については、あのー、今回、いー、規則から法律に上げられたものに沿って新たな、あのー、人事院の規則が定められるのを待って、それに準ずる形のものをつくってまいります。 (
赤信号)」
*「質問に答えてない」と野党理事は松本文明委員長に抗議するが、委員長は抗議を無視する
松本文明委員長:「質問してください。後藤さん、あのー、森大臣にこういう風に答えてくれっていうのをもっと明確にちょっと……」
後藤祐一議員:「人事院規則ができないと具体的なイメージがつくれないって言うということは、人事院規則なんてこの法律成立しなけりゃ、規則そのものはできないんでしょうから、でもだいたいのイメージはもうあるんですよ。ですからそれをもとにこんなイメージのものを考えているっていうのはこの法案審議上では出せないということですね? 」
森法務大臣:「
はい。あのー、人事院において定められる、うー、規則に準じて、えー、しっかりと定めてまいりますが、先ほども申し上げましたとおり、現行国家公務員法上の勤務延長が認められる事由については、あ、人事院において数字上の例としてですが、定年退職予定者が大型研究プロジェクトチームの主要な構成員であるため、え、その者の退職により当該研究の完成が著しく遅延するなどの重大な障害が生ずる場合などを念頭に置きつつ、業務の性質上その職員の退職により担当者の交代が当該業務の継続的遂行に重大な生ずる、重大な障害を生ずるときなどと定められておりますので、えー、検察庁法における内閣の定める事由を定めるにあたっては、あー、このような内容も、おー、参考にしつつ、人事院規則に、新たな人事院規則に準じてまいります。(
赤信号)」
*「ダメだよ」「答弁できない」等と野党議員から抗議の声が次々にあがり、委員会室は騒然となる
松本文明委員長:「後藤祐一くん」
*答弁できない森大臣に一切注意しない松本委員長の席の近くで複数の議員が抗議するも、松本委員長は抗議を無視して後藤議員の名前を呼ぶ
松本文明委員長:「後藤祐一くん」
*「委員長が聞きやすい質問と言っても答弁してない」「答えてない」と野党議員が抗議を続けるも松本委員長は抗議を無視して後藤議員の名前を呼び続ける
松本文明委員長:「後藤祐一くん。後藤祐一くん。後藤祐一くん。もう一度。もう一度。後藤祐一くん。」
後藤祐一議員:「何度も質問してますよ!」
松本文明委員長:「後藤祐一くん。後藤祐一くん。」
後藤祐一議員:
「何のために、国会で審議する意味って、何ですか! こんな答弁だったら、何のために国会審議してるんですか!」
松本文明委員長:「ちょっと静かにしてください!整理します。質問者の質問趣旨に法務大臣が答えたつもりでいらっしゃると思うんです。ところが後藤祐一君は答えてないとこうおっしゃる。だから、どこが答えになってないのか。どうなのか。もう1回だけ、後藤祐一くん、時間も経過しておりますので、もう1度。」
後藤祐一議員:「人事院規則ができるまでは、この委員会で具体的な基準のイメージは示せないということでよろしいですか?」
*森大臣は20秒以上も座ったままで答弁になかなか向かおうとしない
松本文明委員長:「(森大臣に対して小声で)その通りですって言えばいいのに。 」
森法務大臣:「
はい。先ほどもご説明したとおりでございますが、あのー、人事院規則、うー、をなるべく早くつくって頂けるようにご要請をした上で、えー、しっかりその内容に準じて、えー、つくってまいりますし、またその手続きも閣議了解をとるなどの適切な、あー、プロセスをとっていきたいと思います。(
赤信号)」
*「答えてない」等の抗議の声が次々にあがり、委員会室は再び騒然となる
後藤祐一議員:「答えてない!説明するかしないか答えてないですよ!」
松本文明委員長:「後藤祐一くん。もう持ち時間を経過しておりますので、後藤祐一君の質問時間は終わりました。終わりました」
後藤祐一議員:「答えてらっしゃらないじゃないですか!」
松本文明委員長:「申し訳ありませんが、時間がもう経過をしております。うー、ぜひですね、次の機会にまた質問を。次の、次の機会にね。」
*「質問時間は終わってるよ」と与党議員から野次が飛ぶ
後藤祐一議員:「じゃあ、次の機会までに準備をして、人事院規則ができる前に具体的なイメージを示して頂くよう。そうしないと、国会で法案審議する意味って何ですか!真摯な姿勢って何ですか! 何のために法務大臣、ここに来たんですか! 今の答弁のどこが真摯な姿勢なんですか! 審議を続けることを強く要求して終わります。 」
後藤議員の質疑は以上で終了する。
まず、森大臣の答弁を振り返ってみると、3回の答弁全てにおいてワンパターンな論点をすり替えており、
赤信号とした。
1〜3回目
【質問】新基準の
答弁の可否
↓ すり替え
【回答】新基準の
策定方針
「答弁できるのか、できないのか」という非常にシンプルな問いかけであるにもかかわらず、手元の資料に書かれている現行法や今後の曖昧な方針を述べるだけなので、質問と回答が全くもって噛み合わない。
そして、森大臣と同じ
自民党の所属である松本文明委員長はここまでの文字起こしで振り返った通り、
全く質問に答えない森大臣に対して注意をしないばかりか、「質問者の質問趣旨に法務大臣が答えたつもりでいらっしゃると思うんです。ところが後藤祐一君は答えてないとこうおっしゃる」などという不可解な裁定を下して、後藤議員の質問の仕方に問題があるかのような振る舞いを繰り返した。また、後藤議員を始めとする野党議員たちが大声で抗議しても、その声を完全に無視して後藤議員の名前を呼び続ける様子は、人の名前を呼ぶ機能だけしか備えていないロボットのようであった。
この後半の質疑の様子は、ぜひ実際の
映像でご確認頂きたい。
外から聞こえてくる、デモ隊の検察庁法改正に抗議する声。
何度質問されても壊れたテープレコーダーのように質問と噛み合わない答弁を繰り返す森法務大臣。
森大臣の答弁に抗議する野党議員の声。森大臣を擁護する与党議員の声。
質疑が全く成立しない中、ただただ制限時間だけには忠実な松本委員長。
全てが異常だ。
<文・図版作成/犬飼淳>