実際、原油安は今なお継続中で、ペソ/円は4円台前半という安値水準。5円割れでのポジション清算は、必要最小限の損切りだったと見ていいだろう。現在、ジラフ氏は新たなコアポジションづくりを検討中だが、果たして買い時はいつなのか? エコノミストのエミン・ユルマズ氏が分析する。
「メキシコの新型コロナ感染者は多くありませんが、米国で働くメキシコ人を通じて、感染拡大する懸念があります。さらに、原油安をペソが織り込んでいない可能性もある。原油先物価格は4月にマイナスになるほどの暴落を見せたのに、ペソはそれほど下げていない。コロナと原油がリスク要因なのです。ただし、原油価格は欧米でのコロナ終息期待で再度の暴落リスクが小さくなっている。3月にメキシコ国債の格下げが実施され、ペソ売りが一巡したと考えられるため、再度売り圧力が高まっても4.2円を割る可能性は低い。原油価格の回復とともに、5円台回復が期待できると見ています」
ペソの買い場をエミン氏が予想!
だが、高金利通貨のなかには、さらなる下落リスクが高まっているものもある。トルコリラだ。
「リラ安阻止のために当局は為替介入を行っていますが、介入の原資となる外貨準備高がなくなりつつある。それを嫌気してか、トルコリラのIV(予想変動率)が急上昇。15円の大台を割り込んだことから14.5円程度まで急落する可能性がある」(エミン氏)
実は、トルコの新型コロナ感染者数は約13万人で、世界で8番目の多さ。コロナと為替介入の失敗、さらには相次ぐ利下げ措置で、リラ安の可能性は増しているとか。
リラの買い場をエミン氏が予想!
一方で、ポジティブな高金利通貨は南アフリカランドだ。
「新型コロナ感染者は7000人で日本の半分以下ですが、政府はGDPの10%規模に及ぶ景気刺激策を打ち出しているのは買い材料。貴金属などのコモディティは原油より先に底打ちしており、鉱山の多い南アフリカには追い風。対円でランドは6円を割り込み史上最安値圏で推移していますが、7円台への回復も可能でしょう」
ランドの買い場をエミン氏が予想!
エミン氏の見立てはランドが強気で、ペソがやや強気。政策金利は南アフリカ5.25%、メキシコ6.5%、トルコ8.75%の順だが、トルコリラは弱気。ジラフ氏のコア・サテライト戦略を実践するなら南アランドかメキシコペソがよさそうだ。
【兼業“二刀流”投資家 ジラフ氏】
兼業投資家。株や投資信託に加え2017年からFXにも着手。独自の「
【エコノミスト エミン・ユルマズ氏】
トルコ出身。日本へ留学し東京大学院修了後、野村證券などで活躍。現在は
<取材・文/高城 泰(ミドルマン) 図版/ミューグラフィック>