野口悠紀雄氏に聞く、コロナ時代に自分の能力を伸ばす方法

独学を続けるコツは「教える」こと

 独学は決して簡単なことではありません。カリキュラムを自分で作らなくてはなりませんし、途中で挫折してしまう可能性が高い。学校に行く場合には、通わなければ卒業できないとか授業料が勿体無いということがモチベーションにもなりますが、独学はそうもいきません。これを乗り越えるために重要なことは、何のために勉強しているのかという目的をはっきりさせることです。  独学を途中でギブアップしないための強力な方法があります。それは「教える」ということです。例えば公認会計士になるために簿記の勉強をしているとしたら、「野口悠紀雄の簿記講座」というのをブログに作ればいいのです。  多くはないかもしれませんが誰かが私の講座を読んでくれると思えば間違えたことは書けませんし、他の人と同じ事を書くわけには行きませんから深く勉強します。勉強するインセンティブが生じるのです。

独学をする環境はすでに整っている

 こうした勉強方法は、昔はなかなか実現し難いことでした。自分の考えを多くの人に知ってもらうことはそんなに簡単なことではなかった。しかし今はインターネットが発達し、自分でブログを書くのはごく簡単なことになりました。  英語学習においても、紙の教材だけでなく聞いたり話したりするオーラルな教材が簡単に手に入るようになりました。YouTubeにいくらでも英語の音源があります。独学を続けるための条件は、整ってきているのです。まさに今こそ、独学に取り組むべきです。  必ずしも、新しいことを学ばなくとも良いと思います。これまで自分がやってきたこと、仕事で身につけたノウハウをブログに書くのも良いでしょう。書いているうちに、これはこうした方がいいのでは、と思いつくこともあります。書くという行為は自分自身との対話なので、新しい発見があるのです。  独学をするには、無駄なことに時間を使わないことです。私自身も、政府の委員会に出席する時間は無駄だと判断し、切りました。多くの人ができることではないかもしれませんが、無駄なことを切るのは重要です。  今は、通勤時間も減り、会議のためにオフィスに行く必要もありません。普段無駄なことに取られていた時間を活用できる今だからこそ、独学に時間を充てるべきなのです。 <取材・文/汐凪ひかり> <取材/5月4日にオンラインで実施>
早稲田大学卒業後、金融機関にて勤務。多様な働き方、現代社会の生きづらさ等のトピックを得意分野とし、執筆活動を行っている。
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