幸福の科学学園関西校(滋賀県提供)
学園関西校はウェブサイト上で、授業継続の理由について、23日付けで声明を発表した。
〈
①大半の生徒が寮生であり、校舎も隣接しているので、外部との接触が極めて少ないこと。
②通学していた一部の生徒も、希望に応じて、寮に宿泊しているか、自宅待機しており、現在通学してくる生徒がいないこと。
③毎日の検温で生徒一人一人の健康状態を確認し、衛生管理(うがい、手洗い、アルコール消毒、マスク着用)も徹底しており、全員が良好状態を維持していること。
④外部業者等の出入りは必要最小限に留め、どうしても必要な場合は、検温、手指のアルコール消毒、マスク着用をしていただいていること。〉
幸福の科学学園関西中学・高等学校ウェブサイト)
これらを理由として、〈休校して生徒を帰省させる方が感染リスクが高まるため〉授業を継続すると説明している。
しかし本当に、休校する方が感染リスクが高いと言えるのだろうか。
前述の通り学園の生徒も職員も全員が信者と思われる。例外がないと断言はできないが、「ほぼ全員」と捉えて間違いはない。つまり彼らは、幸福の科学の祈願等のイベントに参加する立場にある。
那須校は、教団の那須精舎と呼ばれる大型施設の敷地内にある。徒歩で移動できる距離で、通常であれば学園の生徒や職員は那須精舎での行事に参加する。関西校も、徒歩十数分程度の距離に幸福の科学の支部がある。移動の際はシャトルバスなどを使う必要はあるが約7kmの距離に、大型施設である「幸福の科学琵琶湖正心館」もある。
また現在は不明だが従来は、宗教法人幸福の科学、幸福の科学出版(株式会社)、幸福実現党といった学園以外の教団関連団体の関係者(これも信者)を講師に招いて授業を行うこともある。
「外部との接触が極めて少ない」という学園側の言い分はいちおう事実ではある。あまりに閉鎖的すぎて、関西校の周辺住民からは開校時から現在に至るまで「地域連携を拒んでいる」との批判が聞かれるばかりか、
「本当に生徒がいるのか?」と首をかしげる住民もいるほどだ。
しかし学園の実情は、外部からウイルスが入ってくる危険がない閉鎖環境とは違う。「
集団感染リスクが高い集団と直結した閉鎖環境」だ。
パチンコ店にしろ飲食店その他の店舗にしろ、あるいは企業のオフィスにしろ、十分な補償がないのに休業するわけにもいかないという経済的な事情がある。しかし学園はこの点でも事情が違う。生徒たちの学費収入だけで成り立っているのではなく、日頃から保護者でも何でもない信者たちに向けて教団が学園運営のための植福(献金)を求めている。
「授業を続けるからこそ金が入る。休校したら収入がなくなって潰れる」という構造ではない。
子供にマスクを着けさせずに教団施設につれてくる信者
4月28日。ある相談サイトで学園の生徒を名乗って、いまだに休校せず授業や部活も行われているとする相談を投稿したユーザーがいた。別のサイトでも、別の学園生のものらしきアカウントから、現状を不安視する声があがっている。
学園生自身も不安を感じているように見える。
もともと学園の生徒たちがインターネットで内部の問題に言及するケースは多くない。長く取材している私自身も、現役の学園生に直接取材させてもらえる機会はほぼない。
学園生も信仰を持っている人が多い。成人の信者ですら、公の場で教団の方針に逆らったり疑問を呈したりすることは難しく、そもそも疑問を感じない人も少なくない。中学・高校生である学園生ならなおさらだ。
学園生の大半は、信者である親をもつ「2世」「3世」の信者たちだ。仮に教団や学園に疑問を感じても、教団内で追求されたり、自分の親の教団内での立場が危うくなりかねなかったり、公にはしにくい様々な事情がある。ましてや教団や信者たちから
「悪魔」視されている批判者やジャーナリストに情報提供したとなれば、背教者扱いされかねない。
通常からこうした状況に置かれている学園生がいま、少数とは言えネット上で直接不安を口にしている。休校延長を求めて署名活動などを行なった公立高校の生徒の例などに比べてばささやかに見えるかもしれないが、むしろ学園生にとっては精一杯の行動と見るべきだ。
2世信者が多いということはつまり、実家には幸福の科学の行事に参加している家族がいるケースが多いということ。その場合は実家にも宗教がらみの感染リスクがある。学園に残るも地獄、実家に戻るも地獄、だ。
学園に限らず、幸福の科学そのものが子供たちにとってのリスクなのである。
※ 栃木・滋賀両県への取材は4/30と5/1に行った
<取材・文・写真/藤倉善郎>