参議院インターネット審議中継より
「途上国レベル」とまで糾弾された日本のPCR検査の少なさ
発熱後4日ルールに関する
加藤勝信厚労相の4月29日の問題発言を取り上げた
前回記事に続いて、翌30日にまたもや加藤厚労相から飛び出した衝撃発言を今回は取り上げる。
日本の
PCR検査の少なさについては、感染の実態がつかめず対応が後手後手にまわっている根本原因として複数の有識者が繰り返し指摘してきた。
山梨大学が4月22日に公表して話題になった
オピニオンにおいては、「
途上国レベルの日本の PCR 実施件数」「
日本の国際的な信用を揺るがす事態」などと厳しく非難されている。安倍晋三首相は4月6日に「PCR検査を1日2万件にする」(参照:
日経新聞)と発表したが、1ヶ月近くが経過した4月末の段階においても
目標の半分(1日1万件)にすら届いていない。
医師でもある
共産党・小池晃議員はかねてよりPCR検査の少なさを問題視しており、
2020年4月30日の参議院予算委員会で
加藤勝信厚労相および
安倍晋三総理に改善を要望。その際、加藤厚労相から「
PCR検査2万件やるとは申し上げてない」という衝撃的な発言が飛び出した。本記事では、この質疑を信号機で直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(
青はOK、
黄は注意、
赤はダメ)で直感的に視覚化する。(※なお、色表示は配信先では表示されないため、発言段落の後に( )で表記している。色で確認する場合は本体サイトでご確認ください)
質問に対する加藤厚労相と安倍総理の回答を集計した結果、下記の円グラフのようになった。
<色別集計・結果>
●
加藤厚労相:
赤信号
88%
灰色12%
●
安倍総理:
赤信号
83%
灰色17%
*小数点以下を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはならない
2人そろって
赤信号が8割台という驚異的な割合を占めている。つまり、質問には一言も答えていない。いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。
実際の映像は
筆者のYoutubeチャンネルで視聴できる。
「
PCR検査を1日2万件にする」という
総理の発表に対して、未だに目標の半分(1日1万件)にすら届いていない実態を踏まえ、小池晃議員はシンプルに「
いつまでに検査1日2万件を実施するのか」を質問する。その答弁の中で問題の発言が加藤厚労相の口から飛び出す。その際の2人の質疑は以下の通り。
小池晃議員:「どうやって、いつまでに2万件検査を実施するんですかと聞いてるんです。」
加藤厚労相:「
ですから、私は申し上げてるのは医師が必要とする判断が、あー、医師が必要とす、必要とした検査が行われるということでありますので。別に2万件の能力があるから、あー、2万件やるということを申し上げている訳ではありません。(
赤信号)
そして、今、今あるのは1.5万人、今の、今ある能力は、今、1.5万件ですから、その能力を2万件に上げるための予算。従ってPCR機器の購入費等々支援する。これは今回の中に入れておりますので、それを使って、えー、ち、ちえいけん、地方の衛生研究所、民間の検査場等々が入れて頂くことによって、今1万5000に上がってきた能力を2万に、を超える能力にすると。これはもちろん能力としての向上は図っていく。(
赤信号)
そして、一方で検査実態別能力がある数を検査するのではなくて、医師が必要とする検査がしっかり実施できる状況をつくっていくということであります。(
赤信号)」
加藤厚労相の答弁は3段落全てにおいて論点をすり替えており、
赤信号とした。
1段落目
【質問】検査2万件実施の
時期と方法
↓ すり替え
【回答】検査2万件実施の
定義
2段落目
【質問】検査2万件実施の
時期と方法
↓ すり替え
【回答】検査
能力の向上
3段落目
【質問】検査2万件実施の
時期と方法
↓ すり替え
【回答】検査実施の
判断基準
問題の発言があった1段落目。
「2万件の検査能力がある」ことと「2万件の検査を実施する」ことは別であるという詭弁を堂々と述べている。その根拠として、2万件の検査能力は十分にあったとしても、医師が必要とした場合のみに検査するので、実際の検査数が2万件に届かないことが起こり得るという主旨の答弁をしている。だが、
医師が必要と判断しても検査できないケースが多数報告されていることは周知の事実であり、この主張はさすがに無理があるだろう。