迅速に「困っている市民に手を差し伸べる」。注目を集める明石市“暴言”市長のコロナ対策

「Too Fake」とは大違い。市民目線の政治家が我が国のコロナ担当だったら……

西村経済再生担当大臣

明石駅から市役所までの道沿いで見かけた、西村経済再生担当大臣のポスター

 私はさらにイジワルな質問を重ねた。 ――お前さあ、郵政選挙で落選(2005年)した時に奥さんに「2度と選挙には出ません」って約束したそうじゃない。それがまた明石市長選挙に出て(2011年に初当選)、しかも69票差という薄氷を踏む勝利で。  これは同級生の間では有名な“逸話”である。 泉:いやいや、あれはな。落選した後に一弁護士に戻って仕事してて、2人目の子どもがほしいな、と妻に話したら「子どもを育てるなら選挙なんてできないわよ。2人目の子どもにするか、選挙にするか、どちらかにして」と言われて、「子どもにします」と。そう答えて2人目の子どもが生まれたんや。その子が4歳になって、もうそろそろいいかな、と思って選挙に出たんよ。妻もわかってくれてる。 ――お前、言い訳が政治家みたいになってるよ(笑)  そうは言ったが、実は私はすでにウラを取っていた。泉が出直し選で勝利を決めた直後、私は選挙事務所に駆けつけた。泉はすでにお礼のあいさつ回りに出た後だったが、奥さんが残っていた。そこで奥さんにお祝いを述べるとともに、そのことを尋ねていたのである。奥さんは、泉と同じことを話した。だからこの泉の言葉にウソはない。「Too Fake」と言われるどこかの政治家とは違って。  ところで、この明石市を含む兵庫9区選出の衆議院議員をご存じですか? 街中でポスターを見かけるこのお方。西村康稔・経済再生担当大臣です。政府のコロナ対策の担当ですね。なんか、すっごく皮肉な感じだなあ。  市民目線の政治家である泉が、我が国の総理大臣だったら、あるいはコロナ対策の担当だったら、我が国のコロナ対策ももう少しまともになっていたのではないか? そんなことを感じるが、それを言うと明石市民に怒られそうだ。 「何を言うんや。泉さんには明石市長でいてもらわな困る。そのために圧勝させたんや」  明石市の皆さん、お気持ちはわかりますが、ここは全国民のために一つご容赦を。あくまで友人の感想にすぎませんから。

人民の、人民による、人民のための政治よ、永遠なれ

 泉の政治は「市民の、市民による、市民のための」が基本なのだと思う。どこかで聞いたフレーズでしょ? 奴隷解放で知られる米大統領リンカーンの有名なゲティスバーグ演説の一節、「人民の、人民による、人民のための政治」だ。この演説は次のように締めくくられている。  government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth. (人民の、人民による、人民のための政治を、地上から決して絶滅させないために)  人民の、人民による、人民のための政治は、我が国では絶滅しかけているように私には感じられる。コロナ対策の混乱はその象徴だ。  しかし、明石市ではこれからも「市民の、市民による、市民のための政治」が続くに違いない。市民の市長に寄せる信頼が揺るがない限り。そして泉が政治姿勢を変えない限り、市民の信頼は揺るがないだろう。 <文/相澤冬樹>
大阪日日新聞論説委員・記者。1987年にNHKに入局、大阪放送局の記者として森友報道に関するスクープを連発。2018年にNHKを退職。著書に『安倍官邸VS.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』、共著書に『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(ともに文藝春秋)
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