「リニア工事で大井川の水量が毎秒2トン減!?」をめぐり国交省vs.静岡県のバトル勃発

専門委員のメンバー選びで静岡県と国交省が対立

JR東海の宇野護副社長

JR東海の宇野護副社長。「リニア工事は、大井川の中下流域に影響しない」と明言

 だが、またも揉めた。3月11日に国交省が公表した専門委員のメンバー案に、森地茂政策研究大学院大学政策研究センター所長がいたのだ。このことに県は反発した。  というのは、森地氏はリニアのトンネル工事を受注している大成建設の社外監査役であるからだ。県は「こういう利害関係者にJR東海への指導ができるのか」との疑念から国交省にメンバー変更を求めた。  実は、筆者も森地氏を見たことがある。2016年10月26日、衆議院国土交通委員会でのことだ。森地氏はリニア計画に関することで参考人として参加していた。  本村賢太郎議員(民主党。当時)から「リニア工事では、品川・名古屋間だけで5680万㎥もの建設残土が出る。だがJR東海は具体的な残土処分先を示していない。森地参考人のお考えをお伺いしたい」と尋ねられると、森地氏はこう回答した。 「(リニアについては)ある程度もう手当てをして、すでに土捨て場を契約しているというふうに聞いてございます」  この時点で残土処分地が確定していたのは2割前後でしかない。不勉強な人だと筆者は思った。ともあれ結局、森地氏はメンバーから外れることになる。この点において5条件は守られていると言える。  だが、国のメンバー選考に疑問を抱いた県は、独自に委員を公募した。数人の応募があり、県はこのうち2名をメンバーに推薦すると公表した。すると3月16日、今度は国交省が「その2人は専門家会議に入れない」と公表した。  そして、その2人の名前を見て筆者は驚いた。稲葉紀久雄大阪経済大学名誉教授(環境科学)の名前が入っていたからだ。筆者は何度か取材をしているが、あれほど水問題に熱心な研究者は他にいない。その人物が外されたのだ。

地下水を守るための法案に「トンネル工事などの公共事業に支障」と横やり

稲葉紀久雄名誉教授

静岡県が「専門家会議」の委員に推薦したが、国に除外された稲葉紀久雄名誉教授

 稲葉教授は水問題に高い関心を抱き、かつ行動してきた有識者だ。  超党派の国会議員でつくる「水制度改革議員連盟」(水議連)という議連がある。超党派だから、与党もいれば野党もいる。この議連の功績は2014年3月、「地下水は私水ではなく共有水」と定めた「水循環基本法」を国会で成立させたことだ。ただしこれは理念法なので、具体的に水を守るための法案としての「地下水保全法」の立案に取り組むことになる。  この法案作成を担った「水循環基本法フォローアップ委員会」の幹事を担ったのが稲葉教授だった。同委員会は有識者41人で構成され、全員が無償参加。みな「日本の水を守ろう」と、この法案つくりに心を傾けていた。稲葉教授は当時をこう振り返る。 「当時の代表の中川俊直議員(自民党)からも『早期に法案作成を』と請われ、集中して取り組みました。そして私たちは2か月でそれをやったんです」  その地下水保全法案が水議連に上申されたのが2015年2月17日。地下水を保全するため、環境破壊的な工事に歯止めをかけようとする法案の内容にケチをつける人はいなかった。あとは国会に上程すれば、間違いなく成立すると思われた。  ところがその直前、衆議院法制局から「その法案では、トンネル工事などの公共事業に支障が生じる」との横やりが入り、上程は見送られる(これを「リニアを意識したのだろう」と見る人は少なくない)。  その後、水議連からも、そして2016年3月からの新フォローアップ委員会でも上程の動きはなかった。稲葉教授は新フォローアップ委員会にも相談役として所属していたが、見切りをつけて辞任した。  ちなみにこの新フォローアップ委員会の座長を務めたのが、今回の専門家会議の委員となった沖大幹・東大教授だ。
次のページ
「国民自らが声を上げなければ前進はない」
1
2
3
4
PC_middleRec_left
PC_middleRec_right
関連記事
PC_fotterRec_left
PC_foterRec_right