都が一般客入場を2月末から禁止したことで豊洲市場はガラガラに
当然、ネタを卸す豊洲市場の危機感も強い。
銀座「久兵衛」などに最上級の天然本マグロを納める
仲卸大手「やま幸(ゆき)」の山口幸隆社長が話す。
「
月に5億円あった売り上げが、直近では1.5億円。高級寿司店の休業に加えて、ホテルのお客さんの注文も完全にストップした。高級店向けの仲卸はお手上げですよ。マグロのハラカミとか一番美味しくて値の張る部位だけ売れ残るんだから。ウチは日本一のマグロ仲卸を目指して大きくしてきたから、1年は耐えられる体力があるけど、仲卸の多くは数人で切り盛りする中小零細。
飲食店やホテルが休業を続けたら、仲卸の半分はつぶれかねません。かといって、ウチらは勝手に休めない。
続けるのも地獄、休むのも地獄です」
仲卸業者の現状について明かす「やま幸」の山口社長
実は
豊洲市場に出店する業者が休業するには、都の条例に従い、休業申請をしなければならない。市場機能を維持するための制度だ。すでに15店舗以上が休業申請を出しているが、都が1店につき50万円給付する
“協力金”の対象とはなっていない。仲卸業者の間で温度差もある。
「
スーパー向けの低価格の鮮魚を扱う仲卸業者は『年末商戦並み』と話すほどの繁盛ぶり。一方で国産マグロなどは1㎏の値段が3分の1に下がったりと、
高級店向けの業者は需要減と単価減のWショックを受けているんです。かといって、スーパーに卸すのは至難の業。飲食店は4日後払いですが、スーパーの支払いスパンは2か月。
大量の商品を卸して2か月後の支払いを待てるほど体力のある業者は限られているのです」(日刊食料新聞・木村岳記者)
今、国産マグロのほか、キンメダイやのどぐろなどの高級魚も大きく値崩れしている。一部はスーパーなどを通じて、お手頃価格で消費者に流れているが、今だけの話。「漁師は補償が出るから、いい値がつかないなら休む。おのずと高級魚の入荷は減り続けて、日本人は本当にウマイ魚を食べられなくなるかもしれない」(仲卸業者)という。築地&豊洲の危機は日本の食の危機なのだ。
都は2月末から豊洲市場への一般客の入場を禁止している。大正時代から続く「センリ軒」店主で、東京中央市場飲食業協同組合理事長の川島進一氏は「都が一方的に一般客の入場を禁止して売り上げが激減しているのに、市場機能を維持するのに不可欠だからと市場内の飲食店は休業要請の対象外。休業しても協力金がもらえない」と話す。
<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/池垣 完(本誌)>
※週刊SPA!4月28日発売号より