コロナ休校で注目を集める絵本の読み聞かせ動画。同時に浮上する著作権侵害問題の深刻さ

適正な絵本読み聞かせ動画の利用

 では、インターネットに上がっている絵本の読み聞かせ動画は、著作権違反のものばかりなのか。実はそうではなく、きちんと対処しているものや許可を取っているものもある。  今回の新型コロナウイルスの自宅待機を支援するために、声優の悠木碧氏が、絵本読み聞かせ音源『手袋を買いに』を SoundCloud で4月8日に公開している。  この作品は、新美南吉の児童文学で、「青空文庫」に公開されているものだ。青空文庫は、著作権フリーな文書を収録した著名サイトだ(2020/4/20追記:著作権フリーじゃない作品もあるので注意。詳細は青空文庫参照)。また、編集とBGM作成は、声優の小岩井ことりさんが担当しており、著作権的に問題がないように配慮されている。  青空文庫に収録されている作品の朗読は、実は Youtube でも多く存在する。私も過去に、複数の読み上げ動画を聞き比べたりしていた。絵本に限定したものではないが、こうしたものを聞くのも一つの手だろう。  また、書店でこうした取り組みをしているところもある。福岡県の白石書店では、『絵本の読み聞かせ動画のYouTubeチャンネルでの無料公開』をおこなっている。こちらの動画は5月6日までの期間限定で、動画の冒頭に著作権者や出版社の協力を得ていることが表示されている。  絵本の読み上げ動画をネットにアップロードしたい場合は、このように確認を取る必要がある。また、ずっと公開することは元の絵本の販売を妨げることになるので、期間限定でおこなうのがよいだろう。  声優や書店ではなく、テレビが主導のケースもある。日本テレビでは、YouTube で『日テレアナウンサー絵本よみきかせ』を公開している。こちらも出版社に確認を取っていることが、説明文に記されている。  もし、在宅で子供に絵本の読み聞かせ動画を見せたい場合は、こうした著作権の問題をクリアしたものを見せることをおすすめする。  最後に、著者自体が朗読するケースについて、私自身のやり取りの経験を書いておく。以前、出版社に自著の読み上げ動画をアップロードすることについて尋ねたことがある。権利的には問題がないが、著者が読み上げていることが明確に分かるように配慮して欲しいと言われた。  著者が読み上げているから自分たちもやっていい。そう短絡的に判断する人が多いということだろう。現状、著作権についての知識は一般に行き渡っていない。今回の絵本読み上げ問題などを通して、少しずつでも知識が広まっていくとよいと思う。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』が出版される。
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