各国が対応に追われているコロナウイルス対策。国民への補償や医療設備の拡充など問題は山積みだが、この混乱の最中に、慎重な議論が求められる法案を通そうとする国もある。
そのひとつがヨーロッパにあるポーランドだ。現在、ポーランドではコロナウイルス対策として、
公共の場でのマスク着用が義務化され、
外出や集会の規制が行われている。外出する際にも他人と2メートルの距離を保たなければならず、営業中の食料品店や薬局でも
手袋の着用や
入店制限が求められている。
そんな厳戒態勢のなか、浮上したのが
中絶禁止改正法案だ。EUのなかでも、中絶には厳しいポーランド。現在、人工妊娠中絶が許可されているのは、下記のようなケースだ。
・胎児に重大な障害がある場合
・ 母体に命の危険がある場合
・ レイプまたは近親相姦後
今回の改正法案では、
胎児に重大な障害がある場合でも堕児が禁止となる。これは現在合法的に行われている
妊娠中絶のおよそ98%を占めるものだ。
さらには、人権団体から「
同性愛者への迫害に繋がるのではないか」と指摘されている、
性教育を禁止する法案も持ち上がっている。
集会が禁止されているなかでのこうした法案の提出に、国内外からは批判の声があがっている。
ポーランドでは、
10万人以上の署名を集めれば国民が政府に改正案を審議させることができる。中絶禁止法案は保守的なカトリックグループに後押しされたもので、こういった伝統主義的な団体は、与党である「
法と正義」の大きな支持母体となっている。こうした構図を「ロイター」はこう解説する。(参照:
ロイター)
“法と正義、市民の生活により宗教的な価値観を導入するよう働きかけている政党は、5月10日の大統領選を前に自らがコントロールしている議会で法案を推し進めることに関して、前向きでないことを示した。
この問題は法と正義にとってジレンマだ。過去には有権者の分断が進む可能性があるため、中絶禁止法案を大規模な抗議によって諦めている”
そう、実はポーランドでこういった法案が持ち上がるのは初めてではない。過去には
2016年にも与党である「法と正義」が中絶禁止法案の成立を目指していたが、
10万人規模の抗議デモが行われ、
下院での反対多数で否決されたことがあるのだ。