ミニシアターの抱える問題意識を持っていない安倍総理
先ほどの答弁を聞いていると、そもそもミニシアターが置かれた窮状を総理は理解できているのか不安になった方も多いだろう。そんな安倍総理に対して宮本議員は大前提となる問題意識の有無を確認する。その質疑は以下の通り。
宮本議員:「だから、もっと(持続化給付金の)上限を引き上げるだとか。やる必要があるんじゃないですかと言ってるわけですよ。事業所が持続し続けるためには固定費を賄い続ける。うー、この規模での支援が必要なんだと。その問題意識は総理にあるんですか?無いんですか?」
安倍総理:「
あのー、いわば、事業を営んでいる人たちにとって、まあ、最大の、これは、あー、課題というのはですね、手元の資金がちゃんと確保できているかどうかということが一番の悩みであります。えー、それを確保できるように、我々も支援している。(
赤信号)
今、先ほど申し上げました200万円、100万円と別にですね、手元の資金として、えー、これは例えば先ほど申し上げました最大3000万円までですね、えー、無利子、無担保で5年間返済が免除されるもので、それによってですね、なんとか手元資金を確保することが当然できるわけでございます。(
黄信号)
そして、また同時に、えー、賃貸料等々についてですね、えー、なんとかこれは延ばして頂けるように我々もお願いをさせて頂いているところでございますし、それを進めていくために何ができるかということも考えているところでございます。(
赤信号)」
1段落目と3段落目は以下のように論点をすり替えており、
赤信号とした。1段落目では「事業者は手元資金の確保が悩みである」という
当たり前すぎる内容をなぜか語っており、3段落目では「賃料支払の延期を依頼する」という
大家に負担をなすり付ける考えすら示している。
1段落目
【質問】総理の問題意識
↓ すり替え
【回答】事業者の課題
3段落目
【質問】賃料等の固定費の問題意識
↓ すり替え
【回答】賃料等の固定費の支払延期
また、2段落目は質問に関係する背景や経緯(発表済みの融資)を再説明しているだけであり、
黄信号と判定した。
結局、
ミニシアターの危機をいくら具体的に訴えても、ほとんど質問に答えることはなく、ただ時間を浪費させた安倍総理。「映画監督になりたかった」と語ったことがある*ほど総理自身が映画好きを自称しているにもかかわらず、だ。
〈*
「首相「映画監督になりたかった」 コッポラ監督前に」日本経済新聞 2013年10月17日〉
最後に宮本議員は、日本映画においてミニシアターが果たしてきた役割の重要性を訴えかけて、この質問を締めくくる。
宮本議員:「貸付にですね、えー、手を出して、返せる当てがあるのか無いのかという、ここの躊躇もあるわけです。(中略)こういう規模でもう足りないという声があがっているんだから、もっとですね、じゃあ、映画の文化を潰すわけにはいかないと。総理も映画好きじゃないですか。よく年末ご覧になってますよね。総理の動静見ても。日本の例えば映画なんかで言えば、上映されているですね映画の大半は実はミニシアターなんですよ。昨年公開された1300本のうち1000本はミニシアターだけの上映なんですよ。そういう本当にかけがえのない国民にとっての役割を果たしている。映画だけの話じゃないですよ、どの中小事業者でも中堅企業も同じようにですね、日本社会にとってなくてはならない役割を果たしているわけですよ。それに足りないんですよ。そこはですね、本当に真剣にどうすればいいのかと考えて頂きたいと思いますよ」
しかし、この記事を執筆している4月20日現在、残念ながら事態は何も変わっていない。ミニシアターが毎月の家賃を支払うことすら出来ない、名ばかりの「持続化給付金」の上限は200万円のままだ。
<文・図版作成/犬飼淳>