この会議では、一通り委員の発表が行われた後に外部の有識者・団体の意見を聞く予定になっています。選ばれた有識者・団体には、「大学入試政策」、「テスト理論」、「英語4技能の育成・評価」をはじめとする10項目が用意されていて、その観点をもとにいくつかの団体が選定される予定です。ヒアリングは、高校生や大学生も対象となるようで、民間試験団体と受験産業の意見についてのみ事務局がヒアリングして結果を取りまとめるとしていました。これについての質疑応答の概要は以下の通りです。
牧田委員:ヒアリングの対象者として、高校の先生方、社会人(大・中・小・零細企業)も加えてほしい。
末冨委員:貧困層を含めて当事者の意見を聞くことは重要。その際に、プライバシーに配慮すべき。現場の教員(地方、中堅、若手)などにも聞いてほしい。オンラインを使って多様な若者の意見集約をすることも可能。
両角委員:現場の意見として、大学団体だけでなく個別の大学にも意見を聞いてもらいたい。対象として産業界が入っているが、産業界の人が入試をきちんと理解しているのかわからないので注意が必要。
渡部委員:ヒアリングの方法として、対象者をどのように選ぶのか、本心を語ってもらえるのかなど難しさがある。専門的な研究者にまとめてもらうのも一つの方法である。今までに集められたデータや公表されているデータの検証も必要。
河野委員:地方に勤務する高校の先生、留学経験のある生徒なども対象者に入れてほしい。
小林委員:多様な高校生から誰を選ぶのか難しい。受験産業など民間業者の意見を聞くときに利益相反関係を排除する仕組みが必要ではないか。
萩原委員:民間団体・受験産業は事務局で取りまとめるとすると業者の選定が恣意的になる可能性があるので、委員がやる方がよい。
柴田委員:今回の改革の中に高校生のための学びの基礎診断があったが、その現状はどうなっているか知りたい。
さて、多種多様な意見を聞くこと自体は悪いことではないのですが、その前に大学入試がそもそも何のために存在するのかの考え方を統一しておかなければならないでしょう。もしも、大学側が主体的に入学してほしい学生を選抜する仕組みとするならば、産業界の意見は聞く必要はありませんし、選抜される側の高校生の意見を聞くということも微妙です。すでにネット上で多くの意見を述べている方の意見を聞くとよい(末冨委員)というのは、少なくとも手あたり次第に聞くよりは、かなり適切ではないかと思います。
ヒアリングに関する意見の他に、
新型コロナウィルス感染拡大防止のため学校が休校になっている現状について、子供たちの救済策など文科省への早急な対策を求める声が多く上がりました。(
吉田委員、萩原委員、末冨委員)
この件はこの会議の議題とは直接は関係ないのですが、複数の委員が意見を発表したことで、文科省側に確実に声は届きました。実際に、高校3年生とその家族、高校の教員等の大学入試に関わる方は不安を感じているので、できるだけ早い段階で今後の指針を具体的に示してもらわなければならない状況です。なお、この会議の後の4月17日に萩生田大臣からAO、推薦入試の日程を遅らせるべきとの発言がありました。
最後に、大学の入学定員の厳格化(私立大学に対し、定員の一定倍率以上を入学させると補助金を停止するなどの措置)を緩めるべきという話もありました。最初にも述べたように、この会議は、もうしばらくは、このように話題が散ることもあるでしょう。次回も委員の発表がありますが、その後にどのように深く議論し、収束していくのかに注目していきましょう。
新型コロナウィルスの影響で、ここ数回のこの会議の開催の間隔は空いていましたが、次回は4月23日に開催されます。
<取材・文/清史弘>