入管収容施設にトランスジェンダーの被収容者。24時間中、22時間を独房に閉じ込められ続ける

男性房にも女性房にも入れてもらえず、9か月間独房に

 4月6日、やっと「プレマリン」というホルモンの錠剤をもらえるようになったが、パトさんにはあまり効果がみられない。今まで使っていた薬とは違うようで、使用することに不安を感じている。「月に1回、注射を打てないか」と医者に頼んだが、「注射は高いから入管が認めないだろう」と拒否された。 「だったら解放してくれればいいのに……」  パトさんは以前「フリータイムだけでも誰かと一緒がいい。男性でもいいから同じにさせてほしい」と頼んだが却下された。「ならば女性房のフリータイムで一緒にさせてほしい」と頼んだが、「それもどうせ聞き入れてもらえないだろう」と話す。 「心は女性でも体が男性だから、無理みたいなこと言われた。でも私だって人間よ。犬じゃない。たったの2時間だけ部屋の外に出して、そのあとは部屋に押し込める。そんなの犬扱いじゃない!」と、強く怒りをにじませた。 「このままずっと一人のままなら、また自殺するしかない

多様性を認めない入管の体質がLGBT収容者を窮地に追い込む

 トランスジェンダーであるがために男性房にも女性房にも入れてもらえず、9か月も孤独の中で、ただ苦しみながら生きているパトさん。繊細な彼女は、どこまで耐えられるのだろうか。  過去にも決して多くはないにせよ、LGBTの被収容者はいたし、これからもあることだろう。入管は収容するのであれば、しっかりとした対策を学んでほしい。それができないのであれば、むやみに苦しめないで即刻解放すべきだろう。 <文・写真/織田朝日>
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)など。入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)を2月28日に上梓。
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