イギリスでロックダウン生活を救ったもの。それは「助け合いの精神」

一致団結するイギリス

パトロールする猫

ロックダウンの街をパトロールする猫

 3月15日までジョンソン首相のコロナウイルス対策は、時間をわかりやすく計れるよう「ハッピーバースデー♪」を自分に対して2回歌いながら温水で手洗いすることを推奨するというものだった(これは本当。今もハッピーバースデー手洗いは推奨されているはず)。  というのもイギリスでは当初、自然にまかせて集団免疫を獲得させるというシナリオを採用し、在宅隔離などの手段は取らないことにしていたのだ。集団免疫作戦を初めて聞いたとき「さすが政府は落ち着いてる」とちょっと嬉しくなったものだが、この独自路線はイギリスが誇る無料の国民医療NHSでも負担が大きすぎた模様。それでは病院がパンクしちゃうよ、と専門家から指摘を受け、政策転換を余儀なくされた背景がある。  そして今、外出制限が設けられ、多くのビジネスが休止状態に陥っている。経済的な損失は計り知れない。しかし政府の対応は思いのほか早かった。  イギリスでは人が集う場所を強制閉鎖したとき、同じタイミングで救済策を打ち出した。雇用を維持するため給料の8割を上限2500ポンドまで保証するという政策だ。そして今日は、いよいよ自営業者に対する救済措置が発表された。およそ500万人の自営業者たちが固唾を飲んで待っていた救助策の中身は、過去2年間の平均月額収入の8割を、1か月あたり上限2500ポンド(約32万円)まで保証するという太っ腹なものとなった。支給時期などの問題もあるが、おおむね国民に寄り添った政策であると言えるだろう。  今、この原稿を書いているこの瞬間、窓の外では歓声があがり、大勢が拍手をする音が聞こえている。華やかな花火の音も混じっているようだ。これは医療現場で働くすべてのスタッフへ感謝の意を表するために、英国保健省が主導して行われた国民的なアクションなのである。英国民の、NHS制度への感謝の気持ちは大きい。この危機的状況に際して、国民全員が、心からNHSスタッフに感謝の気持ちを送っているのだ。  何十年か後、私がこのコロナウイルス危機について思い返すときがきたら、政府の機転とNHSの素晴らしい働き、コミュニティの温かさ、そしてイギリス人らしいジョーク精神で乗り切ったんだよ、と若い人たちに伝えていくことになるだろう。  イギリス人のパブ愛が1日も早く満たされる日が戻ってきますように。 <取材・文/江國まゆ>
在英の編集者・ライター。著書に『ロンドンでしたい100のこと』など
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