植草一秀氏「安倍政権は米国債を売却せよ」

’12年秋から始動した円安トレンドに連動して日本株価が大幅上昇した。輸出製造業の円安メリットは絶大だが、庶民は物価高で実質賃金が目減り。陰陽相半ばする円安だが、日本政府は54兆円の損失回収の千載一遇のチャンスを迎える。

円安の陰と陽。庶民は悲鳴も、政府は利食いの好機到来!?【後編】

(政治経済学者 植草一秀氏) ⇒【前編】はコチラ  ところが、円高で時価評価が暴落し、たったの98兆円になってしまった。なんと損失は54兆円に上る。消費税率2%引き上げによる税収10年分を上回る規模だ。  民間人がこれだけの損失を生んだら間違いなく投獄される。ところが、いまだに誰一人、謝罪することすらしていない。  だが、果報は寝て待て。塩漬け米国国債の時価評価が蘇ったのだ。1ドル=120円で計算すると、外貨準備時価総額が、ちょうど152兆円に回復した。54兆円の損失を全額回収できる日が到来したのである。 ⇒【画像】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=21838
外貨準備残高

日本政府が保有する外貨準備残高は’12年1月をピークに高止まり。円高で、ドルベースで出していた損失は54兆円に上っていた。今はこれらを精算する好機か

 全国民が合唱して、安倍政権に米国債売却を迫るべきだろう。この円安のタイミングを見過ごして、再び円高で巨額損失を生むことだけは許してならない。  市場で大量の米国債を売却することを米国政府が嫌うなら、この国債を中国政府に譲渡する交渉を進めるべきだ。中国は米国債保有を外交カードとして有効に活用しているから、多少値引きすれば応じるだろう。安倍政権が国民のために動くかどうか、関心が集まる。 【今週の数字】 ’07年6月~’12年1月の外貨準備損失 54兆円 日本政府はドル買い市場介入で1.3兆ドルの米国国債を溜め込んできたが、上記の4年半で、なんと54兆円もの大損を生み出した。これを全額回収するチャンスが到来 【選者】植草一秀氏 シンクタンク主席エコノミストなどを経て、現在はスリーネーションズリサーチ(株)代表取締役。ブログは「植草一秀の『知られざる真実』」。近著に『日本の奈落-年率マイナス17%GDP成長率衝撃の真実-』(ビジネス社) 図版/ミューズグラフィック
日本の奈落

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