大学生が担うジェンダー運動の盛り上がり。しかし、リスクを負わなければ声をあげられない不公正な現状

広がりを見せる大学でのジェンダー運動

 そんな中でも確かに前に進んでいることも多い。先述の上智大学における学生センター長の辞任は、大学側が学生からの批判をそれだけ重く受け止めたとも言える。  Speak Up Sophiaの活動においても、ワークショップを行う毎にメンバーは増えているそうだ。こうした活動の成果もあり、教職員による性についてのシンポジウムの開催、200人規模の授業の中でワークショップを行うなど性的同意についての理解は着実に広げている。  大きな成果は、1年次の必修科目「ウェルネス(心身の健康)」で性的同意について学習することをカリキュラムに盛り込むことに成功したことだ。今は上智大学の全学生が“性的同意”について触れている。  同様に大学での性暴力をなくすために活動するサークルは近年増えているという。東京大学、一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学、国際基督教大学、創価大学、東北大学などにもセクハラ・性暴力の根絶を目指すサークルが誕生し、様々な成果を上げている。  このような学生団体は自治体が保有する勉強会などにも呼ばれることも多く、大学におけるジェンダー運動は様々な形で広がっているようだ。

大学生アクティビストの活躍

 また、大学生アクティビストの活動が広く話題になることも多い。国際基督教大学の学生だった福田和子さんが2018年にスタートさせた「#なんでないのプロジェクト」は、世界に今普及している様々な避妊法が日本にはないことを訴えた。  同じく国際基督教大学の学生であり、Voice up japanを立ち上げた山本和奈さんも世間にインパクトを与えた。女子大生を性的対象としてランク付けした雑誌への抗議を当事者の大学生として行い、5万人以上の署名を集めて編集部との対話を行ったことは大きな話題になった。  しかし、このような動きは有名大学や都心に集中しているという。地方の大学は置いて行かれている傾向が強いこと、大学という限られた世界だけでなく若者全体に広げていけるのかが課題だ。その中で声を上げている当事者は、大きなリスクを背負っている。 <取材・文/茂木響平>
ライター・イベンター。大学のお水飲み比べサークル会長。現在、上智大学4年生。面白そうな場所に顔を出していたら、なりゆきでライターに。興味分野はネット・大学・歴史・サブカルチャーなど。Twitter:@mogilongsleeper
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会