やがては、微表情だけで電化製品のスイッチを入れたりコーヒーを淹れられるようになる!?
Q6.微表情の専門家になるにはどうしたらよい?
特に基準はありません。また、現在、自動表情分析ツールもあるので、そうしたソフトウェアを使いこなせるようになるのも一つの手です。
しかし、オーソドックスには、表情分析の国際基準的な資格であるFACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)マニュアルを習得することが第一歩だと思います。50~100時間程度の学習で習得できます。FACSマニュアルの試験を受け、テストに合格すると、認定FACSコーダーと呼ばれるようになります。しかし、この認定コーダーはあくまでも運転免許証のような位置づけです。
FACSを用いた分析が一人前に出来るようになるまでに、テスト合格後、約1000時間のFACS分析のトレーニングが必要です。その後は実務の中で活用法を試行錯誤し、スキルを研磨し続けることになります。10年くらいの時を経て、専門家と呼ばれるようになるのではないかと思います。
なお、2020年4月時点で、日本の認定FACSコーダーの数は、推定30名です(公表できるものに限る)。その中の約20名が私の教え子さんです。教え子さんの中には、大学の研究者、大学生、司法関係者、警備・警察関係者、経営者、一般企業勤務者、カウンセラー、人気セミナー講師などがいらっしゃいます。
Q7.微表情の未来はどうなると思う?
研究がこのまま進めば、微表情が個人情報保護の範疇に入るようになると思います。
例えば、私たちがウソをつくとき、恐怖、嫌悪、軽蔑、罪悪感、幸福の微表情が生じる傾向にあることがわかっています。しかし、その現れ方には個人差があります。
ウソをつく度に恐怖を浮かべる方もいれば、罪悪感を浮かべる方もいます。さらに、恐怖でも、恐怖表情が眉に現れる方もいれば、口に現れる方もいます。これが特定できてしまうと、心が可視化されることに一歩近づきます。どこまでこうした微表情の研究を進めるべきか、人権・倫理的な問題を考える必要があります。
一方、明るい面としては、個々人の表情のクセが生活空間にあるAI機器と結びつき、ちょっとした表情の変化―感情・気分の変化―に応じて、部屋の照明が変わったり、テレビのチャンネルを変えてくれたり(指ではなく、感情・想い・念が変えてくれる!)、コーヒーを出してくれたり、そんなガジェットの登場が期待できるでしょう。
生活空間ではないですが、個人的には、多々、講演をしますので、聴衆の方々の盛り上がり・盛り下がりが皆さんの微表情からわかるアプリなどがあれば、紙のアンケートよりずっと正直なフィードバックが得られるな、と思っております。
清水建二の微表情学、101回目からもどうぞよろしくお願いいたします。
<文/清水建二>