(Photo by Finnbarr Webster/Getty Images)
2020年の世界は激動の一言だ。新年早々にはアメリカ軍がイラン・革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官をドローンで殺害したのに驚かされたが、その後、新型コロナウイルス禍で世界中が大騒ぎになっている。世界中が新たなウイルスの脅威の前に、皆引きこもっていくという今まで想像もしたことのない事態を経験しているのだが、気候変動問題もまた、人類がこれから長期的に取り組まないとならないことがらとして浮上している。
220名超の死者を出した一昨年の西日本豪雨、昨年の台風15号・19号がもたらした甚大な被害はいまだ記憶に新しい。この異常な気象災害の連続にもみられるように、気候変動とそれがもたらす危機について改めて考えなくてはならない時代が来たといえるだろう。そしてまた、一言申し添えておきたいのは、気候変動の問題とはちょっと違うが、原発事故もまだ収束していないということだ。原子力発電が気候変動対策の決め手、というものではないことをこの事実が教えてくれるだろうから。
危機の中、世界の人々の物の見方も二分されてきている。大まかに言って左右の対立だ。日本の安倍晋三首相にアメリカのドナルド・トランプ大統領、イギリスのボリス・ジョンソン首相など右派の権威主義的な政権がある国々も多く、民衆間を見回しても、右派潮流の力は強い。日本もそうだし、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」やフランスの国民連合などなど、ヨーロッパなどでも右派の伸長がみられる。
一方では、新たなムーブメントとして、
#MeTooに代表されるように、フェミニズムが世界的に盛り上がり、またアメリカでの民主党予備選でジョー・バイデンに逆転されたとはいえ、
バーニー・サンダースが人気を博しているように、従来どちらかといえば左派の方に属するだろうとされてきたものが改めて注目されている。
そして要注目なのは、この激動の世界の社会的・文化的最先端に“アイコン”として、ティーンエイジの女性が非常に前面に出てきているということだ。
その女性とは、
17歳のグレタ・トゥーンベリに18歳のビリー・アイリッシュの2人。前者は気候変動問題で誰でも知るアクティビスト。後者は史上初、今年1月26日に開催された第62回グラミー賞で、10代で5部門での賞を獲得したアーティストなのだが、この2人、実は共通項が多い。
まず、2人とも一般的な学校教育システムの枠におさまっていない、というのがある。
グレタ・トゥーンベリは気候変動に対する国家の無策に抗議する学校からのストライキ「Fridays For Future(未来のための金曜日)」で世界中の若者の心を掴み、100万人以上が参加するアクションになったことで有名になったのだが、彼女は同時に学校でのいじめの経験なども訴えている。
かたやビリー・アイリッシュもまた、一般的な学校教育のレールにはのっていない。聴覚処理障害を持っていたこともあり、ホームスクールに通い一般的な学校教育を受けたことがないという。
様々な「障害」を抱えていることも2人の共通項である。グレタ・トゥーンベリは発達障害の一つ、アスペルガー障害を持つことを明らかにしている。ビリー・アイリッシュは先述の聴覚処理障害だ。
あとは、ビーガンであることなども共通項だ。親が俳優や歌手、と言った文化的な職業についていることも共通項としてみて良いだろう。
一般的な教育のシステムとの緊張関係にせよ、「障害」を抱えていることにせよ、彼女たちの育ち方は社会的な「普通」とは違う、と言えるのではないだろうか。良いとか悪いとかではなく、ある種の「アウトロー」だからこそできる反抗、という点はあるのかもしれない。