一方、「コロナショックは“サービス業ショック”」との見解を示すのは、千葉商科大学専任講師の常見陽平氏。
「平成の30年間で、日本はサービス業の国になりました。GDPも就業者数も、その約7割がサービス業で占められています。特に宿泊業・飲食サービス業では7割強がアルバイト・パートなどの非正規労働者。まさに、コロナショックで大きな打撃を受けている業界です。日本のサービス業は非正規労働者に過度に依存しており、いま被害を受けているのは非正規労働者ということになります。コロナショックが終息の気配を見せないままであれば、特にこの業界で働く非正規労働者を中心にダメージを受けることでしょう」
常見陽平氏
しかしながら常見氏は「明るい兆しも見えてきている」と述べた。
「これを採用のチャンスと捉える企業もあります。コロナによる失業者・内定取り消し者を積極的に採用する企業も出てきています。今後産業構造の転換があり、サービス業に代わる分野が伸びる可能性もあります」
今こそ企業は、戦略や業務方針を見直すべきではないだろうか。
’21年度の就活戦線は、「就活ルールの変更」や「東京五輪」により、そもそもの混乱が予想されていた。「売り手市場」であるはずの就活生の戸惑いに、さらに拍車をかけるコロナ騒動。いったいどんな影響を及ぼしているのか。
「2月末ごろに書類審査合格の通知が来たのですが、企業自体が3月13日までリモート業務となり、会社見学の詳細はそれ以降に決定するという話でした」
大学の紹介枠でIT企業一本に絞って就活を続けてきていた寺中詩織さん(大学3年生)は、内定が「保留」扱いとなった。
「事態の収束がつかないため、リモート業務も延長に。『経済の先行きも見えず、4月からの雇用は約束できない』と告げられました」
ショックを受けた寺中さんだったが、事情が事情だけに声高に不満をぶつけることもできなかった。
「4月ごろから就活を再開する予定ですが、事態が落ち着くまでは応募を控えます」
また就活生たちは、コロナ騒動に伴うWeb面接や企業説明会などの企業側の取り組みに対して少なからず混乱しているようだ。
「実際に企業を訪れないと社風がわからない」「就活の実感が湧かない」といった声が多く上がる一方、「Webだとカンペが置ける」「交通費がかからない」「エントリーシートに時間がかけられる」と、リモート活動ならではのメリットを実感する声も散見された。
いまだに終息の気配を見せないコロナショック。ふたたび「就職氷河期」が訪れないことを祈るばかりだ。
慣れないリモート就活には、企業側も学生側も戸惑いを隠せない。「就活をしている手応えを感じられない」という就活生も 写真/時事通信社
【全労連・非正規センター事務局長 仲野 智氏】
3月中に数回電話相談を行ったところ、ほとんどがコロナに関する相談だったという。「日に日に相談内容が深刻になっている」と語る
【働き方評論家 常見陽平氏】
千葉商科大学専任講師。大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中
<取材・文・撮影/櫻井 れき 志葉 玲 筒井 あやこ>