新型コロナウイルスの影響は卒業生のみならず、在校生や新入生に対しても広がっている。東京藝術大学では今回の影響を受けて、音楽学部で聴音書き取りを中止するといった意向をみせた。次いで、北海道大学は後期試験を廃止し、センター試験のみで合否を判定する。
受験生にとっては人生の岐路といえる時に、このような変更は人生を左右しかねない。また、早稲田大学は入学式を中止し、新歓活動についても5月11日まで停止することを発表。これを受けて同大学のサークル代表を務めるSさんは「新歓は新入生を確保するためのサークルの生命線。今回の発表はサークルにとって死活問題だ」と難色を示した。早稲田大学に限らず、新型コロナウイルスの感染被害を防ぐために入学式や授業を延期にした大学は多い。さらには、このような急な事態に大学側の対応が遅れ、連絡が式の直前になってしまった大学や、延期の日程が何度も変更になった大学も一部見受けられる。
卒業式や課外活動、卒業旅行の中止に悩むのが4年生。入学式に際して影響がでているのが新1年生ならば、就職活動に影響するのが現2、3年生だ。今後の就職活動に関しても様々な受け止め方がされている。
合同説明会の多くが中止となり、学生と企業との接点は減っている。また、対面面接を延期したり、WEB面接に切り替える企業も多い。一方で、地方から首都圏の企業を受けている大学生は「WEB面接だとわざわざ東京まで行く必要がなくなるため、却って就職活動の負担が減った」と肯定的に受け止める向きもあり、ネガティブな反応ばかりでもない。今年の経験を経て、就職活動におけるリモート化が進展することも考えられる。
2021年卒で就活する3年生のMさんは「就活への影響を懸念している。採用人数が リーマンショックや東日本大震災の時のように減ることも考えられる」と語る。しかし一方で、2021年卒は2月末時点で 10%内定が出ており、すでに就活も終えた人もいる。また、今年度の採用計画は既に決まっているため、採用人数が下方修正される可能性はあるがそこまで影響は少ないのではないかといった見方をしている学生もいる。
現在就職活動を行っている2021年卒の学生らで動揺がある中、その一つ下の代にあたる2022年卒の間でも不安が広がっている。2022年卒で就職活動を控える現在2年生のBさんは「2年生はオリンピック後の不景気を受け、元々就職活動が厳しいと聞いていたため余計に不安だ。オリンピックの延期もあり、就職氷河期が来るとも一部のメディアでは言われている。2個上の代の先輩方の時は売り手市場であり、それの恩恵を受けていて羨ましい。就職活動の早期化もあり、早くから動かなければいけないと言うが憂鬱だ」と暗い表情で語った。
就職活動が既に終わっている4年生も安心してはいられない。新型コロナウイルスの影響で、事業の縮小や仕事を削減する会社が増えたため、一部企業では内定を取り消しているところもある。また、内定先への入社が延期になったという人も多い。今回の新型コロナウイルスに関する影響は、大学生にとっても単なる行事ごとの中止で済む問題ではない。4年生は卒業式など大学生活の集大成と言える行事に出席できず、新1年生や現2、3年生にとっても人生に大きな影響が出かねない事態となった。
それぞれで受ける影響は違うが、今後もどういった状況になるか不透明であるため、学生の間でもしばらく気が休まらない日々が続くだろう。一刻も早い事態の収束を願うばかりだ。
<取材・文/茂木響平>