嫌がらせにとどまらず、命の危険を感じた在留邦人もいる。島内の語学学校に勤務する日本人男性2人は、「夕暮れ時に人気のない通りを歩いていたら、突然、拳銃を突きつけられてカバンや財布をすべて奪われた」と話す。セブ島には拳銃を所持した警官や軍人たちが目を光らせているが、無抵抗な観光客などを狙った“不良”も少なくない。外出禁止令で経済活動がストップしたことで困窮し、悪事に手を染める現地人が増えつつあると考えられる。日系語学学校の現地マネジャーも次のように現地の状況を明かす。
「今回の新型コロナ騒動で、多くの語学学校は閉校に追い込まれるでしょう。留学生への返金保証をしているところもあれば、そうでないところもある。つまり、保証をしているところは軒並み倒産リスクを抱えている。留学の問い合わせは、3月頭を最後に途絶え、予約もすべてキャンセルで膨大な赤字。4月中旬から学校再開の声もありますが、現状を見ると難しいでしょうし、1年以上の長期戦となる可能性もある。仮に再開しても、この時期に留学する人はいないでしょう。数か月にわたり一切の収入が断たれる可能性が高く、この先どう生活していけばいいか途方に暮れています……」
マニラ封鎖を受けてセブ島の空港は帰国を希望する外国人旅行者で大混雑。航空券は3 倍以上に高騰
語学学校に限らず現地で働く日本人は給料の支払いも保証されない状態だ。別の語学学校関係者が言う。
「一律で休校が決定している4月24日までの1か月間、職員は有休消化で凌ぐことになります。ただ、それ以降はどうなるかわからない。セブ市は28日からロックダウンとなり、出社も不可能となりました。正直、給与の支払いすら怪しい。ほぼすべての産業が壊滅的な状況で、日本人だけでなくフィリピン人も職を失う人が大量に出てきている。国からは日本円で約1万円の臨時支給があるそうですが、雀の涙ほどの額で何の解決にもなりません」
より悲惨な状態にあるのが首都マニラだ。一時的に出国の術を失った観光客に追い打ちをかけたのが、政府が発表した国内ホテルの新規予約の停止。これにより、4月14日までマニラのホテルは封鎖状態となった。日本人駐在員が、惨状を明かす。
「4000人以上の観光客がホテルを強制的に追い出され、宿泊先を見つけられない事態に追い込まれたんです。野宿を強いられた人も大勢おり、ホームレス同然の生活で凌いでいた観光客も見かけた。もともと治安が悪いマニラで野宿は非常に危険。新型コロナ騒動で金銭的に厳しくなった人々が溢れて治安が悪化し、“リアル北斗の拳”のような状態ですよ」
新型コロナは命だけでなく、理性をも奪いかねない。異国の地で孤立する邦人たちの苦悩は続く……。