コロナウイルス対策に見えた、安倍政権の隠蔽体質

情報公開していた中国と対照的な日本の隠蔽体質

逢坂誠二政調会長

菅義偉官房長官への申入れについて記者団に語る逢坂誠二政調会長(右)。政府の場当たり的な甘い新型肺炎対応を批判

「専門家の意見を聞いている」と言うところの専門家委員会の委員長は、感染症対策には専門外のウイルス学者にすぎず、感染症対策のプロを欠いた“素人集団”が政府方針の追認しているように見えるというのだ。CDCが科学的決定をする米国と政治家主導の日本との決定的な違いともいえる。原口氏は情報公開の重要性について、こんな質問をした。 原口氏:情報が正しく開示されて、みんなが同じ認識を持つのは極めて大事だと思います。情報公開の大切さについて教えていただけるとありがたいのですが。 岩田教授:私は2003年に北京にいたのですが、当時SARSが流行っていて、その時に中国がものすごく批判されたのは情報隠蔽でした。SARSに対する情報を諸外国にちゃんと伝えていないと。それからウイルスの情報などを科学者に回してくれないとか、ものすごい批判を受けたわけです。当時、中国はそんなに巨大な国ではなかった。  しかしコロナウイルスについていうと、中国は良かったところも悪かったところもあると思うのですが、少なくとも、このコビッド(COVID19=新型コロナウイルス)に対して徹底的に戦う姿勢を示しています。  そして、これはBBCの報道でよく聞くのですが、記者会見をやると、公開性と透明性を、情報公開を徹底的にやるのだと明言されています。隠し事はしないということです。武漢などのデータで、中国にとっては都合が悪いデータがもちろんたくさん出ています。患者さんの死者もたくさん出ています。  しかしながら中国は、都合の悪いことも全部ちゃんと開示するからこそ、国際社会の信用が得られるのだという教訓を多分SARSから得たのだと思います。そして今、中国版CDCが2002年にできて、SARSの教訓を得て、そして徹底的な科学的分析と専門家による介入と情報公開をしている。  ひるがえって日本は、最初の頃はコビッド(COVID19=新型コロナウイルス)が出てきた時、中国はまた隠していると揶揄することがあったわけですけれども、蓋を開けてみると何のことはない。隠しているのは日本の方でして、情報公開はしない。中の状況も教えない。専門家を入れないし入れてもすぐに追い出し、理由も説明しない。  本当にひどい状況です。SARS の時も2009年の新型インフルエンザの時も日本は感染症対策で大変だったのですが、当時と今は何が違うかというと、当時は世界中がSARS問題、新型インフル問題に関わっていたので、日本がどうやっているのかに対してまったく見ていなかった。  しかし今は違います。中国がコビットと戦って感染を減らそうとしています。他の国も感染対策がうまくいっていると言われています。その中でいちばん問題になっているのが、このクルーズ船、プリンセス・ダイヤモンドです。世界中が見ています。  その時に、DMAT(災害派遣医療チーム)なら入っていいとか、入ってはダメだとか、誰から横槍が入ったとか、そういった寝技的な伝統的な厚労省の論理というのは国際社会にはまったく通用しない。  ですから今日もCNNとかBBCとか、ニューヨークタイムズから取材を受けましたが、「厚労省はいったい何をやっているのだ」ということで皆さん、ものすごく不可思議に思っていて、「国際社会的にはありえない」と。  中国が透明性と公開性を主張しているのと翻って、日本はここで自分たちに都合が悪いことは全部公開して、うまくいかなかったことを認めないといけない。全部100点満点にはいかないので、時にはうまくいかないことがあるのです。  それを認めて公開してこそ、国際社会の信頼が得られる。そこを隠して、あたかも全部うまくいっていることになっているような戦時中の放送のようなことをやると、国際社会の信用はガタ落ちになります。今、それがどっちの方向に行くのか。すごく大きな問題なので、省益などのつまらない小さなことで判断してほしくないと強く思っています。

都合の悪いことも公開して初めて、日本は信用してもらえる

菅官房長官

「危機管理能力抜群」と評され、安定した政権運営を支えてきた菅官房長官だが、今回は影が薄い

 締め括りの質問として原口氏が「国民の皆様、政治家に向けて今の時点でいちばん訴えたいことをおっしゃっていただけないでしょうか」と問い掛けると、岩田教授は次のように答えた。 岩田教授:この問題は非常に重要な問題で、そして日本のコビッドがどうなるかを世界中が注目しています。いま、これをきちんとやれば、世界も日本の対策を認めてくれるでしょう。それは、都合の悪いことを隠すのではなくて、都合のいいことも悪いこともちゃんと公開して初めて、日本のアカウンタビリティ(説明責任)を信用してもらえると思います。  みんながそれを願っていると思います。ぜひ、すべての方がそういう原則に基づいて、世界の方も「日本は大丈夫だな」と思っていただけるような対策を我々はするべきだと思いますし、頑張りたいと思います。 ※※※※※※※※※※※※※※※※  ここで終了となる流れであったが、原口氏が冒頭で岩田教授の経歴紹介をしてなかったことに気がつき、自己紹介でヒアリングを締めくくることになった。 「岩田健太郎と申します。神戸大学に勤めていますが、今日言ったことは私の見解で、神戸大学の見解を代表するものではありません。感染症を生業にして、この仕事を20年以上やっていますが、いろいろな感染症の問題が起きる度に考えさせられることはあったのですが、今回の問題も何とか、しっかりと対応できるように頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします」 <文・写真/横田一>
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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