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新型コロナウィルス問題は、安倍晋三首相の判断によって、2月末に局所から全国の問題へと急速に拡大しました。それまで、中国・武漢からの帰国者への対応、ダイヤモンドプリンセス号への対応、北海道での対応と、徐々に拡大してきた対応が、2月27日夕方の政府対策本部において、
安倍首相が全国の小中高校に対し、週明けの3月2日から春休みまでの一斉臨時休校を要請したためです。
安倍首相の判断は、全国に混乱を引き起こしました。前々日に政府対策本部が決定した「
新型コロナウィルス感染症対策の基本方針」では、急速に患者が増加していた北海道での休校措置を是認することを想定していたものの、全国での休校措置は念頭になかったためです。その北海道ですら、本部方針を受けて大変でした。筆者は、たまたま25日から26日まで、道内のある町役場にいて、町長や職員たちがてんやわんやだったことを見ています。
安倍首相の判断が、
安倍首相と側近の思いつきだったことは、報道で明らかになっています。
朝日新聞は「首相独断、見切り発車」との記事で、全国一斉休校が
安倍首相と今井尚哉首相補佐官兼首相秘書官の独断で、首相側近の萩生田光一文部科学大臣や菅義偉官房長官ですら寝耳に水だったと報じています。専門家会議や文部科学省の助言を踏まえた決定でもありませんでした。
独断の効果は、現時点で分かりませんが、
問題を経済に波及させたことは疑いありません。安倍首相の判断は、経済活動を自粛させてでも、感染拡大を防ぐというものであり、そうした判断自体はあり得るものです。実際、感染者が急速に増加した中国や欧州では、同様の措置を取っています。筆者も、首相と補佐官の独断という決定プロセスへの疑問を持つものの、その判断を絶対的に否定するわけではありません。
重要なことは、
経済活動を抑制するという判断をするならば、同時にそれによる影響を最小限にするための措置を講じることです。経済活動を権力的に抑制するわけですから、需要と供給の一時的な縮小は避けられません。縮小を回復させることは、すなわち感染症対策を無にすることですから、通常の経済対策を実施できません。
しかし、安倍政権は、休校に伴う保護者等への対策については講じたものの、
経済活動の抑制への対策は泥縄になっています。今回の問題は、個人・企業による資金ショートが起きることです。予定していた収入がない一方、様々な支払い期日はやってきます。そこで資金がショートすれば、どれだけ多額の収入があっても、黒字経営をしていても、不渡り・倒産となります。個人であれば、家賃やローンなどが払えない状態になります。
早急に、
経済活動の抑制に伴う個人・企業の資金ショートを防がなければなりません。そのもっとも効果的な政策は、
全面的な納税猶予です。それにより、税として支払われる予定だった巨額のキャッシュを当面の資金繰りに回せます。それにより、
資金ショートに伴う連鎖的な不渡り・倒産を防止できます。行政だけでなく、体力のある大銀行・大企業・公営企業も、同様の措置を講じるべきでしょう。経済学者の野口悠紀雄は「
対コロナ経済対策、最優先で実行すべきは『無条件の納税猶予』だ」と論じており、筆者もこの意見に全面賛同します。
安倍首相の独断は、経済への副作用を十分に考慮していなかったため、全国の個人・企業の存立を危うくしています。これを重大な教訓とするためにも、危機が収束した後、客観的な検証が不可欠です。そのためには、形式的な会議の記録のみならず、関係するあらゆる会議・打合せ等の記録を保存しなければなりません。この点については、専門団体の「
情報公開クリアリングハウス」が懸念を表明しています。
さて、安倍首相の独断は、
与野党において消費減税の声を高めるという、思わぬ飛び火を見せています。あたかも、安倍首相の思いつきが許されるならば、与野党の国会議員にだって思いつきが許されるとでもいうような展開です。
コロナウィルス問題での
緊急経済対策として消費減税を求める動きは、自民党から始まりました。
産経新聞によると、3月11日、自民党の議員連盟「日本の未来を考える勉強会」(会長:安藤裕衆議院議員)が「税率ゼロ」を政府に提言しました。同党の「日本の尊厳と国益を護る会」(代表幹事:青山繁晴参議院議員)も税率5%への減税を要望しました。
野党でも、緊急経済対策として、消費減税を求める動きが起きました。
東京新聞によると、立憲民主党・国民民主党・社会民主党などでつくる衆参の会派の71議員が3月19日、コロナウィルス問題での緊急経済対策として、消費税率を5%に引き下げる提言を会派の各党党首に提出しました。呼び掛け人の福田昭夫衆議院議員は「経済の大きな落ち込みが考えられ、消費税率を緊急的に引き下げる必要がある」と訴えたとのことです。
緊急経済対策として消費減税を求める与野党議員は、
かねてより消費減税を求めてきた議員たちです。消費減税について、一家言ある議員ばかりともいえます。