同じ店舗の従業員が
飲食店ユニオンの組合員だったことから、田島さんもユニオンに相談。会社と交渉し、シフトを元に戻してもらうことができたという。
「実際にシフトを減らされた期間は短期間で済みました。それでも元々20数万円の給与が20万円弱に減ってしまい、買いたいものを満足に買えない状態です。
会社は店舗のマネージャーに『人手が余っているならすぐ帰宅させるように』と言ってたので、あのままシフトカットが続いていたら、生活に困っていたと思います」
来店客が減り、売り上げが減少しているなら、シフトカットも仕方がない。そう考えて諦めてしまう人も多いだろう。しかし田島さんたちから相談を受けた飲食店ユニオンの栗原耕平さんは「
売り上げが落ちているので仕方がないと諦めないでほしい」と話す。
「新型コロナウイルスの影響は今後も続くことが予想されます。ますます多くの飲食店でシフトカットが行われる恐れがあります。給与が減ったら、すぐに生活に支障をきたすという人も少なくないでしょう。労働条件を一方的に切り下げることは認められていませんので、店舗の売り上げが落ちているからといって泣き寝入りしないでほしいと思います。
そもそも経営者の都合で本来勤務するはずだった日を休みにされた場合、給与の保障を受けることができます。労働基準法26条では、『使用者の責に帰すべき事由』による休業の場合、平均賃金の60%以上を労働者に休業手当として支払わなければならないとしているんです。
また、民法536条第2項では使用者の故意・過失で労働者を休業させた場合には、全額の給与補償を請求する権利が労働者にあるとしています。また、そもそも労働基準法上で定められている休業手当の金額である「平均賃金の60%」というのは「最低限」の基準でして、これを上回る休業手当の支払いが禁止されているわけではありません。平均賃金の60%では生活していけないという方も多いでしょうが、労働組合を通じて100%の給与補償を求めていくことは可能です」
小中高の臨時休校に伴い、仕事を休まざるを得なくなっている保護者も少なくない。政府は、そうした保護者に対して給料を支払った企業に対し、一日8330円を上限に補助する方針を発表した。また、同じく臨時休校で仕事が出来なくなったフリーランスや自営業者に対して一日4100円を給付する方針だ。他にも、事業者に対する各種の融資が設けられている。
しかし栗原さんは、こうした対応では不十分だと指摘する。
「新型コロナウイルスの経済全体への影響のしわ寄せが、労働組合に組織化されていない、
不安定雇用の非正規労働者に集中すると思われます。しかし政府のこの間の対策では、経営悪化に伴う非正規労働者のシフトカット・労働時間削減や雇止めによる生活困難への対応は十分に扱われていません。既に発生しており今後拡大していくであろう非正規労働者の生活困難への対策の検討が急務であると思います」
<取材・文/HBO編集部>