「新型コロナ・ショック」を乗り切る斬新すぎる取り組みに密着

居酒屋「いづも池袋」

居酒屋「いづも池袋」が始めた「567円飲み放題」プラン。3月13日に訪れると、満員で5人が入店待ちだった

 政府の自粛要請を受けて各種イベントの中止が続くなか、センバツ高校野球も中止に。トランプ大統領の「1年延期したほうがいい」発言が飛び出し、東京五輪の開催見送りも現実味を帯びてきた。

インバウンド需要“ゼロ”で地元住民も自粛ムード……

 そんな自粛ムードが蔓延する国内で、青息吐息なのが中小企業。インバウンド需要がパタリと止まり、感染リスクを抑制しようと外出する消費者も減少。その影響をモロに食らったサービス・小売り関係の事業者は特に追い詰められている。  だが、新型コロナ騒動を逆手にとって、集客に繫げる事業者も現れている。自虐的なPRで成功したのは京都・嵐山。「スイてます嵐山」と銘打ったポスターを制作。「人間よりサルの方が多いとか、久しぶり。」などのメッセージも盛り込んだところ、見事にバズったのだ。PR企画者の嵯峨嵐山おもてなしビジョン推進協議会幹事・石川恵介氏が話す。 「春節から客足が例年の3~4割減となって、このままだとマズいなとみんなで話し合ったんです。そのときに思い出したのが、『今年は空いてて、満喫できました』と喜んでいたお客さんの言葉。これは“売り”になるのでは?と感じたんです」
京都・嵐山のポスター

2月15日からSNS上でバズり始めた京都・嵐山のポスター。自虐メッセージは全4種類ある

 ただし、自虐的なギャグを盛り込むには葛藤もあったとか。 「新型コロナに罹って苦しんでいる人もいるなかで、こういうPRが受けるのか不安がありました。だから、ポスターが刷り上がってから1週間寝かせて、様子を見ながらポスターを貼っていったんです」(石川氏)  そのポスターはSNS上でも拡散。日本人観光客が急増した結果、「なんだ、混んでるじゃないかって苦笑するお客さんもいるほど」(同)とか。 京都・嵐山のポスター 同じく、斬新な企画で満員御礼なのが東京・本郷の旅館「鳳明館」。趣きある老舗旅館が打ち出したのは「文豪缶詰プラン」だ。1泊8000円で、18時と翌朝の希望時間に「先生、原稿進んでますか?」という進捗確認が入るという。 「かつて本郷には100軒以上の旅館が軒を連ね、文豪たちが足しげく通っていたようです。手塚治虫さんが編集者に外から見張られながら執筆したという逸話が残っている旅館もありました。その空気が味わえる『外から見張られている!体験』オプションも1回1000円でつけられます」(企画担当者)  さらに、“本妻”と宿に連れ込んだ“愛人”が鉢合わせするオプションも2万円(15分程度)でつけられるというこだわりよう。そんな企画が受けて、3月14日の予約開始直後にほぼ完売したという。  一方、宿泊費“ゼロ”という破格のサービスで人気を博しているのは、ホテル日航大阪。一日3室(通常3万6000円以上)を大阪在住のファミリーに無料放出する企画を用意したところ、「3日間で1万件超の応募」(広報担当者)が殺到したという。 「新型コロナの影響でかなりの数のキャンセルが発生したので、休校でご自宅にこもりっきりになっているお子さんと親御さんの楽しい思い出づくりに利用してもらえたらと思って総支配人が企画しました」(同)

コロナをぶっ飛ばす? 567円飲み放題が人気

 このほか、箱根の旅館「仙石原ススキの原一の湯」は「まじでコロナウイルス勘弁して下さいプラン!」と銘打って1泊2食付き3900円(通常1万6500円)で提供。倉敷の「鷲羽山下電ホテル」は、半額(3300円)料金で“巣ごもり”プランを打ち出したところ、「家族連れやリモートワーク目的のお客さまの利用が増えている」(担当者)とか。  旅館までの移動時の感染リスクが気になるところだが、トラベルジャーナリストの橋賀秀紀氏によると、「今は国内便、国際便ともに空席が目立ち、便によっては半径1m以内が空席ということも。快適なうえに感染リスクは低く、国際便に関しては破格の料金で乗れる」という。それでも気になる人は、「チェックイン時に最も後方の席を押さえると、利用者が少ないことが多い」(同)。  遠方まで足を運ばずとも、近場で自粛ムードを吹き飛ばすこともできる。「567(コロナ)円をぶっ飛ばせ!」という1時間飲み放題プランが話題の東京の居酒屋「いづも池袋」はその典型例か。お店に足を運んでみると入店待ちの客が外に溢れるほどの繁盛っぷり。“大将”の尾村猛氏によると、「半分近くにお客さんが減っていたのに、567円飲み放題が話題になってからは連日満席。ここ数日は予約も断らざるをえない状態」とか。あまりにも好評で、「飲み放題プランを5回も延長して、一人30杯も飲んでいかれるお客さんもいる(苦笑)」というのは嬉しい悲鳴か。  実は、ここに挙げた成功例は非常にレアなケースだ。経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏が話す。 「この種のアイデアで勝てるのはごく一部。だから、現状維持、ないしは単純な値下げで当面を乗り切ろうとするサービス事業者が大半。しかし、新型肺炎の終息時期が見えない以上、現状維持は自殺行為。長期値下げできる体力がないなら、むしろ早めに従業員をリストラして一時休業したほうが、先がある。サイゼリヤなどの低価格外食チェーンが時間を持て余した学生たちで賑わっていることを考えても、アイデアをひねり出して集客アップを実現した事業者と格安大手チェーンや認知度の高い有名店は勝ち組に、そのほかの現状維持型中小事業者は負け組に……と明暗が分かれることになるでしょう」  消費者のスタイルも同様だ。自粛を決め込むのも限度がある。この騒動の最中だからこそ、安全に満喫できるプランを選択するのも一興だ。
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