「触れてはいけないものとして扱わないで」 母親を孤立させる流産・死産の実態

「触れてはいけないもののように扱われるんです」

 流産・死産の経験による精神的なダメージが実生活に与える影響は大きい。心身に不調をきたし、食事を作る、電車に乗って移動をするなどの日常生活が困難になるケースが少なくない。悲嘆状況を抜け出せず、うつ状態に陥ることもある。  そのような状況に陥る原因の一つが、当事者の孤立だ。友人や職場の同僚などは、どう接したらよいかわからない、どのような言葉をかけたらよいかわからないと悩み、結果として当事者を孤独にさせてしまう。 「触れてはいけないものとして扱われていることを感じるんです。接し方がわからないという気持ちももっともだし、こちらもそれをわかっているのですが、当事者はそのままではどんどん孤立していってしまう。かと言って、自分から『気にかけてほしい』なんて言うエネルギーはないんです。たまにでいいから「様子はどう?」と声をかけてくれるだけでも一人じゃないんだと思えるし、気にかけてくれることが力になる」(小原さん)

当事者間でうまれる“悲しみ比べ”

 当事者同士で話せないことも、実は多いと言う。「当事者間で、“悲しみ比べ”が起きてしまうんです。似たような境遇とは言え、それぞれの状況は少しずつ違っている。あなたは上の子がいるからいいじゃない、下の子が生まれたからいいじゃない、と嫉妬の気持ちが生まれることもある。当事者でなくても、気持ちを受け止めてくれる人になら気兼ねなく話せるという場合もあったりするんです」(小原さん)  流産・死産から少なくとも1,2年の間は深い悲嘆状態にいるとされている天使ママ。その間は、当事者間や周囲の人間だけでなく、医療従事者や行政などの多角的なサポートが必要であると小原さんは語る。 「死産の場合、自治体の戸籍課に死産届を提出することになっています。インターネット等を通じて自ら情報にリーチしようとする人もいれば、そのエネルギーが湧かない人もいる。支援されるべき人がこぼれてしまわないためにも、死産であっても保健師さんが相談に乗ることができるというような情報を周知してケアにつなげ、孤立を防ぐなど、何らかの行政機関からのサポートを得られるようにしてほしい」(小原さん)

死産後「赤ちゃんの泣き声が聞こえる病棟で過ごした」

 また、医療機関における対応の差も課題だと言う。お腹の中で亡くなった赤ちゃんを出産した場合、病院によっては、手形をとる、沐浴をする、ベビー服を着せるなど、十分なお別れの時間を設けてもらえるところもある一方で、赤ちゃんをひとつの命として扱ってもらえないようなケースもあるという。  メンバーの平尾さんの赤ちゃんは対面後、お別れの時間を設けることなく霊安室へ連れて行かれた。出産後は新生児の泣き声が聞こえる一般の産婦人科の病棟に入院したため、辛くて自ら退院を早めてもらったという。このような対応の差が、当事者間の“悲しみ比べ”に発展することもある。「あの人は手厚く対応してもらったのに、どうして私は…と思ってしまう。自分の子どもに対して、そこまで(沐浴をするなど)してあげられなかったという思いで、悲しみや罪悪感が一層強くなってしまうんです」(平尾さん)
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軽視されてしまう「流産」
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