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デマがきっかけで、全国的にトイレットペーパーの買い占め騒動が起きている。メンタルに問題を抱えている人たちにとって買い占めは「一種の癒やしになっている」という。ウイルスに感染しなくても、心の病になってしまっては意味がない
トイレットペーパー買い占めに走る人たちの心理とは?
新型コロナウイルス感染の拡大により、日常生活にもさまざまな影響が出ている。全国で小中高校が休校となり、筆者がいる診療所でも子どもの預け先に苦慮するスタッフが出ているが、感染の危険がより高い病院に子連れで出勤してもらうわけにもいかない。
影響が広がると一番動揺するのが、うつ病などでメンタルに問題を抱えている人たちだ。うつ病の症状の一つに「悲観的な思考」があり、「私もかかるのでは」「このまま日本が衰退するのでは」とネガティブな考えが止まらなくなる人もいる。不安のあまり「お湯を飲むといいらしい」といった根拠のないデマに惑わされる人もいる。
今回もトイレットペーパーやカップ麺などを買い占める人が出ている。スーパーで「入荷未定」といった文字を見ると余計に不安になり、朝から行列をつくってとにかく何でも買おうとする人もいる。
「在庫はたくさんあるし、生産も問題なく続けている」といくら呼びかけても、買い占めはいっこうに収まらない。なぜなのか。
不安にならず、「なるようになる」と開き直るのが大事
特に今回のように相手がウイルスの場合、私たちはそれを積極的に撃退する術を知らない。せいぜいよく手洗いをして、人混みに出かけないで家にいるくらいしかできることはない。しかし、この「何もせずにじっと耐える」ということほど、人を不安にさせるものはない。さらにいつ終わるかわからないと言われると、恐怖でいても立ってもいられなくなる人もいる。かくれんぼで「いつ見つかるか」とドキドキしながら隠れていることに耐えられなくなり、自分からオニの前に飛び出すようなタイプだ。もともとはマジメで、コツコツと決められた課題に努力して取り組むのが得意な人に多い。
その人たちは、とにかく「ウイルスに対抗するために何かしたい」とソワソワしているので、「トイレットペーパーが足りなくなる」と言われると、「これだ!」と買いに走ってしまう。そして、目的の品を奪うようにカートに乗せ、レジの行列に並んでいるとき、「私はやるべきことをがんばっている」という安心感と充実感を得るのだ。つまり、買い占めが一種の「癒やし」になっているのである。