中国発ウイルスのパンデミックを10年前から予測していた『首都感染』著者の高嶋氏を直撃<2>

首都感染 前回より、十年以上前からパンデミックの到来を予言していたかのような書、『首都感染』(講談社文庫)の著者・高嶋哲夫氏を紹介しているが、氏の作品の特徴は科学的知見をふんだんに取り込み、未来の大災難(ディザスター)を正確に描写することである。今回は、そんな高嶋氏に新型コロナウィルスの危機に今さらされている日本が今後とるべき道を聞いてみることとしたい。

新型コロナの危機に日本が取るべき道は?

「インバウンドで中国人を受け入れられないのは当然ですが、今後中国の工場から部品が届かなくなるとか、日本全体も経済的に大きなダメージを受けることになります。だからこそ、世界全体が全力をあげて封じ込めに協力していくということが大事になるでしょうね」と語る高嶋氏。  実を言うと、「インバウンド」については、筆者が経営する民泊を直撃している。一月末だったか、中国からの問い合わせが入った。  「中国のどちら」と聞くと「北京」というので「ならお待ちしています」と返答した。すると、「実は、1月20日に武漢で乗り換えまして……」と言うのだ。こちとら閑古鳥が鳴いているので受け入れてあげたいのはやまやまだが、ほかのお客さんにうつったら、あるいは自治会長として近所のご老人にうつったらということも考えなければならず、丁重にお断りするしかなかった。筆者自身への打撃も深刻である。

日本も、いち早く隔離策を取るべきだった

 今回世界各国が武漢へ自国民救出のためにチャーター便を飛ばした。その中でも、オーストラリアは武漢の国民をオーストラリア本土ではなくクリスマス島に送り込んだ。島民と隔離できるのであれば、それが一番よい案なのではないか。  「日本でも、感染症の隔離のことをよく知っている専門家が仕切ってホテル一棟を借り切るとか、そういうことは必要ですよね。亡くなった方もおられますのであまりきついことは言えないのですが、そのあたりの対応は甘かったと思いますね」  チャーター第一便で帰ってきた人のうち二人が勝手に帰宅したという。常識で考えて、リムジンバスなり京急線に乗った時点でアウトである。友人の医師に至ってはこの一件を「バイオテロ」と断じ、「この計画を考えた奴は日本を沈没させたいのか」とまで罵った。 「やはり、封じ込めに対する知識とか危機感が足りなかったと思います。船の話でもそうです。夫婦二人が同じ部屋で寝起きを共にしていたら、絶対相手に感染することはわかりきっているんですよ。一人が感染してもう一人が無事ということはありえない。そうやって船全体にパンデミックが広がるというのは十分にありえる話なので、最初から陸上で隔離することを考えるべきでしたね」  「首都感染」においては、WHOが大きな役割を果たす設定になっているが高嶋氏は、このように持論を述べる。  「今回のWHOの対応は鈍かったと言わざるをえません。エチオピア人のトップがWHOと中国の癒着ともいえる関係のために色々と忖度したとかなんとか言われていますが、そう言われてもおかしくないほど対応が遅く、ウイルスの名前も”COVID-19”ではなく、世界の教訓の意味を込めて、”武漢-19”にすべきでした。偏見や風評被害は、『人の心の弱さと無知』に由来します。教訓として人類の心に刻むことこそ、亡くなった方への追悼になります」(編集部注:編集部の見解とは異なりますが高嶋氏の意見としてそのまま掲載します)  
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ウイルスが収まっても「一件落着」にはならない
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