現在までコロナウイルスの国内での感染は報告されていない。しかし、どの病院も医薬品などの不足から強い警戒心を抱いているという。疑わしい症状のある患者はカラカス大学が対応することになってはいるが、その為の準備がすべて不足している。
保健相カルロス・アルバラドは2月28日に「各州には少なくとも一か所の病院が緊急を要する治療のための機能を備えている」と述べたが、それ以上の詳細説明は避けた。それを明らかにすると、どの病院でも十分な治療を受けられないでいる患者がそこに駆け付ける可能性があるからだ。
また同日、マドゥロ大統領が感染監察委員会を設置し、その指揮をデルシー・ロドリゲス副大統領が執ることを明らかにした。しかし、その構成メンバーの詳細は控えた。
カラカス大学の感染医学専門のマリア・エウヘニア・ランダエタは「インフルエンザ感染の時のプランはあった。しかし、今回の問題はどのようにしてプランを満たすのかということだ。何しろ、医師の手袋もマスクもない状態だ。集中治療に必要な使える医療機器も必要だ」と述べ、「一人の感染患者を治療するのであればできる。しかし、できないのは多数の患者が出た場合だ」と指摘した。
また必要な医薬品も手に入らない可能性もある。(参照:「
Infobae」)
米国マイアミ大学の感染フォローシッププログラムの代表パオラ・リヒテンバーガーは「ベネズエラでは死亡率は他国に比較して高くなるであろう。というのも適切な医学治療を受けるのが非常に厳しいからだ」と指摘した。(参照:「
El Nuevo Herald」)
カラカス大学病院では防護ゴーグル、マスクN95、手術着コスチューム、手袋、水分補給ソリューション、酸素セラピー、シーツ、水、石鹸などを求めている。しかし、それがもう
数年ほど十分に手に入らない状態にあるそうだ。
更に、患者の方の問題点は
長期の食料難で多くの人が栄養不足で病原菌が体内で活発に活動し易い状態にある。
もう一つ問題点は
感染医学専門医が不足しているということだ。「2年前と比較して13%減少した。昨年7月まで380人いたのが54人が国外に出てしまった」とオレタ元保健・社会保障相が述べた。
経済危機で外国からのフライトも大幅に減少している現在、国外に脱出する住民は多くいても、外国からベネズエラに入国して来る人は少ない。その分、コロナウイルスに感染する可能性は低いが、感染率ゼロを今後も保つことはほぼ不可能であろう。何れは感染する。しかし、一旦感染するとそれが拡大するスピードは他国と比較して相当に速くなるように思われる。
<文/白石和幸>