やってる感だけの政府の新型コロナ対策をよそに、全国の知事は頑張っていた

頑張る知事と比べると際立つ政権の「後出し」対応

 「やってる感」の演出にまんまと乗ってるNHKとかワイドショーとかしか見ない皆さんは、安倍政権が十分に新型コロナウイルス対策をしていると思うのでしょうか。韓国では、日本の10倍以上のPCR検査を実施しているにもかかわらず、国民が文在寅大統領に「全然できていない」と怒っているのですが、日本は韓国と比べても対策が後手に回っているのに、あまりに政治に無関心すぎて、安倍晋三総理に不満を漏らす人は少数派です。  先日も、民主主義で欠かせない手続きをすべてすっとばし、専門家の意見も無視して唐突に、思いつきで「小中学校を休校にしてくれ」と要請を出したので、各自治体や学校の現場は無能なリーダーに振り回されることになり、てんやわんやになってしまいました。しかし、そんな実害があっても、誰も政治に関心がないので、いつまでもこの無能な安倍政権は安泰……となりかねません。  これまでろくすっぽ仕事をしてこなかった安倍晋三総理が突然、全国の小中学校や高校に3月2日から春休みまでの間、休校にするように要請を出しました。「要請」というのは、あくまで「お願い」であって、法的な根拠はありませんので、必ずしも休校にする必要はないのですが、これだけ危機的な状況にありながら総理大臣からの要請を無視できる人はいないので、ブツブツ言いながらも休校には応じました。  ネトウヨが「オマエは総理大臣が良いことをやっても褒めないじゃないか!」と言ってくるので、一応は書いておこうと思いますが、僕は学校を休校にすることには「賛成」です。なので、最初は「安倍ちゃんグッジョブ!」と思いました。ところが、せっかく「グッジョブ!」と思いかけたのに、その決定に至るプロセスがゴミすぎて、みんなが安倍晋三総理のケツを拭わなければならないことになっている状況を見て、どこまでも仕事のできない無能なんだと痛感させられることになりました。  まず、安倍晋三総理が小中学校の休校を決める前に、北海道の鈴木直道知事が北海道の小中学校の休校を決断して、みんなから褒められていました。北海道では小学生にも感染が広がり、中学校教師、給食のおばさん、スクールバスの運転手まで感染している状況です。既に学校の関係者に感染が広がっていて、これを止めるためには休校にするしかありません。新型コロナウイルスの全道的な広がりには北海道民の方々も心配していますし、現在進行形で感染が拡大している北海道は事情が特殊です。なので、全国の小中学校を休校にするという判断が褒められるかと言ったら、それは賛否両論分かれるところになるでしょう。ただ、予防するという観点で言えば、休校にした方がいいと思うので、安倍晋三総理の判断が間違えているとは思いません。問題はそれをどのように判断したのかということです。  北海道の鈴木直道知事は、それこそ学校関係者とも議論をして「休校やむなし」と判断したはずですが、安倍晋三総理は違います。野党に通告することもなければ、自民党の青年局長をしているような議員さえ寝耳に水だったのです。つまり、この決定は安倍晋三総理による「独断」ということになります。

国民のことより自分のことな安倍総理

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために休校にするんだと言って、おそらく反対する人は少ないことでしょう。みんな、休校にした方がいいと思っているからです。ただ、いざ休校にするとなると、物理的なオペレーションが複雑化します。まさに今、問題になっているような「子供を学校に通わせている間に働いているシングルマザーやシングルファーザーはどうするんだ?」という話は当然出てくるし、子供の居場所をどう確保するのか、その居場所となる場所に感染のリスクはないのかなど、想定される問題を解決するための時間が必要になります。  事前に解決できる問題は解決しておかないと、例えば、共働き家庭の子どもたちを学童クラブで受け入れるとしても、学校よりも人口密度が高くなってしまい、学校に通っているよりも逆に感染リスクが高くなってしまう可能性もあります。  準備する時間があれば、「部屋を2つにしよう」みたいな対策を取れますが、対策を取れないうちに感染が広まったら元も子もありません。  安倍晋三総理は今日の今日までオペレーションを回した経験がないのだと思いますが、自分が命令を出したら誰かがやってくれると思っているのです。しかし、普通の政治家は「これをやったらこうなるので、そうならないようにこれをする」というところまで考えるのが常識だし、現場にもある程度の余裕を与えることで、万全の状態を作ってもらうものです。  日本は既にダイヤモンド・プリンセス号で大失敗しているわけですから、ここは一つ、ちゃんと環境を作るべきではないでしょうか。  千葉市の熊谷俊人市長が言っていた「社会のシステムが崩壊しかねない」というのはその通りだと思うし、これまであまり弱者に目を向けてこなかった大阪市の松井一郎市長でさえも「子供の居場所を確保しないといけない」と言っているのを見て驚きました。  わりと新自由主義をこじらせているタイプの市長たちでさえ、突然の決断に困惑しているのです。せっかく安倍晋三総理の決断を歓迎しようと思ったのに「俺ちゃんがナイス決断をするから、みんな動け!」をやってしまったので、この無能野郎をどうしたものかと思ったのです。
次のページ 
安倍総理の周りも呆れた危機感のなさ
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会