一番明確なのは中国と米国である。このウイルスの発信源である中国は3月5日の時点で感染者8万411人、死者3013人と発表している。(
参照)
しかし、中国が発信するデーターは信憑性に欠けるということ否めない。実際の感染者も死者も発表している数字を遥かに上回る可能性もある。仮に発表している数字が正解だとしても、このように感染者が多数出ている国がオリンピックに選手団を送るとは思えない。
米国は今年11月が大統領選挙だ。トランプ大統領は感染の危険度を無視して東京に選手を送るとは思われれない。送れば、それが選挙の票にマイナス影響するのは必至だということも承知しているはず。しかも、予防接種・呼吸器疾患センターのナンシーメソニアはこのウイルスの米国内での感染拡大は避けられない」と述べている。(参照:「
El Confidencial」)
トランプ大統領は彼女のこの発言を否定したが、彼女の指摘は正解であろう。また米国では無保険者が多くいて、医療を受けられずこの感染を助長するようになる。
ロシアはドーピングの影響で国の代表としては選手を派遣できない。個人レベルで参加せねばならないから、敢えて参加しようとする選手がいてもその数は僅かであろう。
中国、米国、ロシアが不参加を表明すれば、それは自ずとヨーロッパ諸国を始め、世界レベルで参加を辞退する国が多く出て来るはずである。
例えば、EU圏で一番感染者の多いイタリアは3月5日の時点で感染者は3089人、死者107人だ。5月に選手団を派遣できるほどに事態が回復しているとは全く想像できない。
日本政府がオリンピックを開催したくても、参加者が激減して開催する意義がなくなるということだ。
この開催に投入した資金は当初の予算を大きく上回って3兆円を超えたとも言われているが、開催できないとなると日本国家の屋台骨が揺らぐほどにそのダメージは深刻なものとなる。IOCは緊急事態に備えての基金として10億ドル(1080億円)が用意されているとしているが、その金額では投資した総額から比較して雀の涙でしかない。
このダメージを僅かでも抑える意味で2021年に延期することが考えられる。それはこれまで前例がないということと、関係した企業などは新たに契約をし直さねばならなくなり、非常に困難を伴うことになる。しかし、ダメージを出来るだけ少なくするには、これまで前例がないとしているが、延期しかない。
スペインの場合、目立つことのないスポーツ連盟の場合はオリンピックに参加するということでスポンサーがつくことになり金銭的に助かる。中止となると、スポンサーがいなくなり、採算面から見て連盟そのものの存続も問われるようになるそうだ。(参照:「
El Periodico」)
JOCは延期などありえないと発言しているが、内心は開催できなくなる可能性が高いと思っているはずだ。
<文/白石和幸>